オリジナル小説



この地方には最近2つの不幸な出来事が重なった。
ひとつは、火山が噴火して多く犠牲者が出たこと
もう一つは、その直後、謎の奇病が蔓延してたくさんの人が亡くなったこと




キロたちはひたすら人目につかないように山の中を進んでいた。
行く手にとても大きな山がそびえる。



キロ(あああ・・どうしてこんなことに、・・・よくよく考えたら、逃げて、どうにかなるはずないのに・・・)



キロが草を分け入ったその先には、広場があった。
広場にはたくさんの石が並んでおり、その一つの前で御婆さんがたたずんでいた。
どう考えてもお墓のようだが、あまりに粗末なつくりだった。


御婆さん「・・・おや・・・まだ生き残りがいたのかい・・・」
とても泣き腫らした目をしていた。
御婆さん「もしや、外から迷い込んだのかい?来る途中にここに近寄るなと警告されなかったのかい?」
キロ「あーいやーそれは、そのいろいろありまして・・・」
キロは返答に困った。まさか倉庫をめちゃくちゃにして逃げてきたというわけにもいかない。



使い魔「何かお困りですか?もしよければ相談に乗りますが?」
キロ(こいつ、また勝手に仕切ってやがる・・・)


・・・・


キロは御婆さんが出してくれた食べ物にがっついた。



御婆さん「あの火山が見えるかい?」
キロ「ええ、あの遠くに見える。」
御婆さん「ついこの間まで、ここの土地は、火山灰の豊かな土地と温泉と景観でたくさんのひとでにぎわっていたさ・・・それがあの火山が噴火してたくさんの人が亡くなった。そのせいで、人も寄り付かなくなった。それでもなんとか私たち家族は生き延びてきたけれど、2,3か月前から妙なことが起こり始めた。何の前触れもなく、ひとり、またひとりと死んでいく、わたしの家族も娘夫婦も孫たちもひとりひとり・・・私一人を残して・・・」



話を聞くほどにキロの寒気は止まらなくなった。自分が倉庫をめちゃくちゃにしたことなどとても小さいことに思えた。
キロ(ちょ・・・これは洒落にならないような・・・)



窓から蝙蝠が飛んできて
御婆さんの体に止まった。
次の瞬間、御婆さんの体から、青い炎の塊が飛び出した。
そして、御婆さんはその場に倒れこんだ。
キロ「え、御婆さん??」
急いで体を支えたが、体温が急速に失われていくのを感じた。
キロ「これってまさか」
キロの人生の中で死体を見ることも運ぶこともあっても死の瞬間に立ち会ったことはなかった。


使い魔「キロさん!!」
本が光りだしてページが開いた。




生と死を入れ替える悪魔

生きた人間を殺し

死んだ人間を蘇らせる

蝙蝠のような外見




キロが家の外に出てみると

「こんにちは〜」
空から黒い翼を生やした
シルクハットのスーツを着た男が舞い降りてきた。


「初めまして、わたくし、悪魔のディアン・ボロスと申します。以後お見知りおきを」
キロ「お前が生と死を入れ替える悪魔?」
「あはははははぁ、・・・その名前で呼ばれるのも久々な気がしますね。しかし、それはあなた方が勝手に名づけたあだ名のようなもの、もしよければディアンと親しみを込めて呼んでください。」


キロ「お前が人を殺してまわってるのか?」
ディアン「あははははははぁ、ひどいひどいひどい。まるで、わたくしが殺人快楽者のようなその言いぐさ、ここ2,3百年の間に生まれた新参悪魔とわたくし達のような由緒正しき伝統ある悪魔を一緒にしてもらっては困ります。」



キロ「?」



ディアン「由緒正しき、マナーと教養ある悪魔は、自分の欲望のままに能力を行使したり致しません。ちゃんと人間との契約によってのみ力を行使するのです。封印を解かれてからというもの力が有り余ってしょうがなかったのですが、最近、大口の注文が入って大忙しなのです。」


キロ「大口注文??」



ディアン「あなたのことは前々から存じ上げておりましたよ。イベルコテレサ、他にもたくさんの悪魔を退治してきた悪魔にとっての天敵。この時代の白い剣の所有者」


ディアン「・・・おっとこんなところで油を売っていてはいけません。それでは獲物もいただいたのでこれにて失礼させていただきます。またの機会にお会いしましょう。」




悪魔は飛び立ち、夜の闇に紛れて見えなくなった。