オリジナル小説

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スラム街までやってきた。
たくさんの廃墟に囲まれた暗い通りが続く。
虚ろな目をした人々が行ったり来たり、地面にへたれこんだりしていた。




キロ「これから、人探しするわけだけど、親父さんはどんなひとなんだ?」
使い魔「背格好とか特徴とかわかります?」


ニア「そりゃあ、あたしのお父さんは、背が高くてかっこいいわ。イケメンって評判のカルデラ王のご子息のギレン皇太子に似てるかも頭も良くて、いろいろ教えてくれるし、優しくて力持ちなの、それからそれから・・・」



キロ「・・・よし、手当たり次第探すか。」
ニア「ちょっと、まだ、半分も言ってないのに」



使い魔「お父様はどんな仕事をされたんですか?」
ニア「・・・・知らないの」
使い魔「へ?」
ニア「お父さんは、俺の仕事は大人の世界だから立ち入っちゃダメだって・・・
でも、お父さんは会社のエースで、リーダーで、ムードメーカーで、社長で、取締役だって言ってたわ」
使い魔「・・・はぁ、それはたいそう立派なお父様で」




とりあえず、
近くのおじいさんに話しかけてみたが
どうにも様子がおかしく、夢見心地のようだった。
「バース?知らんなぁ・・・まあ、この国の王あるわしが直々に手配してやらんこともないぞ・・・ひひひ」


キロ「?国の王?」



そのようなことを言う者は町の中心部へ行くほどに増えて行った。
「人生を変えることができる」とささやく人々も町の中心に向かっていた。
キロはすごく嫌な予感がした。



使い魔の本にも反応があった。


人生を変える悪魔
人に人生を変える幻を見せる
夢から抜けられないものは永遠に幻を見続ける
羊と少年のような外見





町の中心部には大きな石像があった。
100年前に絶頂期を迎えたカルデラの王デシベルの像
他国の侵略を退け、すべての富と名誉を欲しいままにした
歴代の王の中で一番有名な王の像


その周りにたくさんのひとが倒れこんでいた。
数十、数百の人々が埋め尽くす広場
ただ眠っているだけのように見える。
多くの者が寝言でブツブツと訳の分からないことをつぶやいていた。


ニア「な・・・」
ニアはあまりの異様な光景に言葉を失った。
使い魔「これは悪魔の仕業ですね。」
キロ「とにかく、親父さんを探そう」



親父さんは着ている服ニアがすぐに見つけ出した。


キロ(全然、ギレン様に似てないな・・・)



ニア「お父さん!お父さん目を覚まして!!」
ニアが叫んでも反応がない。
使い魔「悪魔の呪いですからね。キロさん白い剣を」
キロ「あ、ああ」
キロが親父さんに駆け寄ると



パチン


誰かが指を鳴らす音がした。
キロの周りにいた人がいなくなった。
使い魔もニアもいない。



「はじめまして、白い剣の所有者」

幼い少年のような少女のような人物がそこに立っていた。

「ボクの名前はメアっていいます。」
キロ「お前が、”人生を変える悪魔”なのか?」
メア「その呼び名で呼ばれるの久しぶりだなぁ、くすくす」



キロは白い剣を構えようとしたが、手に武器がない。



メア「ここは、ボクの幻の中だから、剣はないよ、それとも持ってた方が安心?くすくす」
その言葉の直後キロの手には、白い剣が握られていた。
メア「白い剣を持っていても、ボクの幻からは逃れられない。これは100年前もおんなじ」



「ボクには、キミの心の中が見える。キミも人生を変えたいんだよね?さあ、ここからキミの新しい人生が始まるよ。」


パチン
少年が手を鳴らすと


キロはかつての職場であるカルデラ城に立っていた。