オリジナル小説

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カルデラ城の食堂にて



メガロ「おい、キロ!聞いたか?
最近出没する謎の銀色の髪の美少女の話、
なんかもう、この世の者とは思えないほどの美人らしいぞ」

キロ「へー」


キロの警備兵の同僚で一番仲が良かったのがメガロである。
とてもにぎやかな性格でいつも周囲を和ませていた。


ミリア「ちょっと、メガロ、静かにしなさいよ、他のお客さんに迷惑でしょうが」
メガロ「へーい」
ミリア「ねぇ、キロもそう思うでしょ」
キロ「はは」


ミリアは食堂で働く、同年代の女性であった。
飛びぬけて美人でもないけれど
誰にでも気さくに話しかけてくれる。雰囲気のいい人だった。
キロは密かにミリアに思いを寄せていたが、
メガロとミリアが実は付き合っていたことをあとで知ることになる。


確かこの会話をした日の夜から

①宝物庫の警備をして泥棒に負けてまんまと宝を盗まれる
②ミリアとメガロが付き合ってたことを知る
③失敗の責任を取らされて首になり給料ともども没収される


という順序で事が進んでいった気がする。
不幸というのはまとめてやってくるんだなとそのとき感じたっけ・・・



メガロ「今夜の俺の持ち場は宝物庫か」
キロ「え?」
メガロ「なんだよ、シフト表見てないのかよ」



ここは幻の中だから変わるのか。
次の日、やはり宝物庫に泥棒が入った。



「おい、メガロが泥棒に気絶させられたってよ」
「しかも、大切な財宝何点か盗まれちまったって」



メガロ「俺は、俺は、・・・・」
ミリア「メガロ・・・元気だしなって、なんとかなるよ」
キロ「・・・・・」
キロは複雑な気分であった。
あのときのキロは誰かに責任をなすりつけたいとすら思っていた。



そして、メガロは首になりカルデラから出ていくだろう。
傷心のミリアをキロが慰めるうちにキロとミリアはお互い両想いに・・・



キロ(もし、こうなっていたら、どんなに良かっただろう)


メガロには申し訳ないけれど、
こうなっていれば良かったなと思っていたのは事実だった。
俺の罪はメガロがかぶればいいんだ。



キロ(これで、毎回死ぬ思いで悪魔を退治しなくて済む。村人を殺さなくて済む。シスターさんにひどいことをしなくて済む。このままずっとこの夢を見ていたい・・・)




はは、そんなわけにいかないだろ
もう、俺に居心地のいい場所で夢を見続ける資格なんてないんだ・・・





キロ「せーのっ」
キロは自分の頭を柱に打ち付けた。
メガロ「おい、キロ何してんだよ」
ミリア「き、キロ??!!」



キロはメガロの肩をつかんだ。
キロ「メガロ、大丈夫だ。」
メガロ「お前が大丈夫かよ、額から血が大量に出てんぞ・・・」
キロ「分かってる。これは幻なんだ。」
ミリア「何を言ってるの?」


現実は、メガロとミリアは真剣に付き合っていて
仕事を失敗して、首になったのは俺なんだ。
これが現実だ。もう迷わない。




キロは目を覚ました。


使い魔「キロさん大丈夫ですか?」

キロ「ああ」
キロは両手で親父さんの胸ぐらをつかんでいた。
親父さんは額から血を大量に流している。
使い魔「キロさん急に眠ったかと思えば、いきなり起きて親父さんの胸ぐらをつかんで頭突きをかましたんですよ、覚えてないんですか?」
ニア「お父さん大丈夫!!」
ニアが親父さんの額の血を布で拭いた。



キロ「・・・・」
キロの額からも血が流れ出している。