オリジナル小説

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キロはぼーっと遠くで休んでいる夫婦を見ていた。



キロは恋愛などしたことがなかった。
憧れていたのは食堂の看板娘のミリア・・・
彼女は面倒見がよく
人見知りのキロにもよく話しかけてくれた


ミリアは親友のメガロと付き合っていた。
どこかそういうそぶりもあると思いながらキロは黙殺していた。


キロはミリアを本気で愛していなかったのか
キロは自問してもわからない。



今の世の中、一部の上流階級を除いては自由に結婚できる。
いや、王族でさえ、自由に相手を選べる時代なのだ。





アーシェは結婚したこともなければ
男性と付き合ったことすらない


デシベル王直属騎士団には女の騎士も何人か存在した。
そのなかで怪力の持ち主ファナはいつも自分の夫について楽しそうに話していた。

ファナ「ってわけよ、あははは」
アーシェ「・・・・」
ファナ「って本当に興味なさげだな・・・てめえにも浮いた話のひとつやふたつないのかねぇ」


アーシェ「ないわ」


ファナ「きっぱりいうねぇ・・・」
(そういえばこの間、アーシェの親父さんに
「娘にいい人を紹介してやってくれないか?」
ってマジに頼まれたっけ
まあ、このファザコン娘が誰かと付き合えると思わないけど・・・)



ファナ「あんたは一生結婚できないわ」
アーシェ「別に困らないわ」




というわけでアーシェは人づきあいの仕方がよくわかっていない部分があった。





キロは丘の上でパンを食べていた。
少し離れたところでアーシェもパンを食べている。
シルさんの一件のあとアーシェはたびたびご飯を食べに現れた。

キロ(ああ、英雄なのに、野良猫みたいに扱っていいんだろうか・・・)


使い魔「なんかキロさんになつく野良猫のようですね」
キロ(言葉にすんなー)


アーシェは無表情でパンを食べていた。
アーシェ(・・・・・)

ああ、思えば、直属騎士団だったときはお金なんて、余るほどあったのに・・・



キロ「・・・なあ、アーシェ?」
アーシェ「・・・何?」





キロ「前に一回俺の心臓を治したことがあるよな、あれでなんとかならないのか?」
アーシェ「あれは、あなたの心臓を体から取り出すことになるけどいいの?」


キロの顔は若干青ざめた。
キロ「・・・・アーシェは傷を治せるじゃんか」
アーシェ「・・・正直いうと・・・今のあなたの心臓に宿る魔力は強すぎる・・・あなたの心臓から魔力を取り出したわたしはその魔力を制御できない。おそらくこのあたり一帯が更地になるけどそれでもいい?」

キロ「よくない」


使い魔「私なんてもらった瞬間破裂するぐらいの魔力ですよ。本当にどうやったらただの人間がここまで魔力を蓄えられるのか」
アーシェ「本当にすごいわ、キロの心臓は」


キロ(褒められている気がしない)



アーシェ「現時点であなたを治せる手段は全くない・・・」
キロ(うぐぅ
アーシェ「でも、安心して必ずあなたを治すから・・・」

アーシェは自信満々の顔で言った。
キロ(全く根拠がないけど・・・)


まあ、期待せずにおくか・・・別にもう死んでも構わない・・・もう生に執着する必要もない・・・もういいんだ