オリジナル小説

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武術の先生に習う




担任の先生「常々思っていたんだが・・・」


担任の先生「素手で壁を砕くっていう行為はなんらかの武術の類じゃないだろうか。」
孝一「・・・武術?」


担任の先生「俺はその方面には疎いんだが、空手とかボクシングとかのことだよ。」

孝一「そうか、テレビで空手割りとかやっているし、もしかしたら・・・」


担任の先生「門外不出の秘拳とか古武術とかあるかもな(まあ、ありえないと思うけど)。」

孝一(・・・)




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孝一は毎晩、毎朝、町内を散歩していた。散歩?いや修行のためのロードワーク・・
実はこっそりと壁をチェックして吟味しているのだった。


いい壁があったら殴ってみたい・・そんな衝動に駆られる。






さびれた道場で道着を着て道場の掃除をする日々・・・
彼女の名前はユズハ
身長は中学生の孝一よりも少し高いくらいで、黒髪のショートカットであった。



となりのおじさん「おーいユズハちゃん、回覧板だよ」
ユズハ「どうも」
となりのおじさん「それと、最近この辺りで、かべの前で何かをしている不審人物が目撃されているようだから気をつけるようにね。」
ユズハ「かべの前で?何をするんです?」
となりのおじさん「さーなにかブツブツ呟いて、壁を殴り続けているらしい。」



ユズハ(そんな人物・・・いるわけないでしょうに)


道場の玄関横でそれらしい子供がいたのだった。
確かにぶつぶつつぶやきながら壁を殴っていた。



孝一は見つかったとばかりに逃げようとしたが、ぐいと襟を掴まれてしょっぴかれたのだった。



出された安いほうじ茶を飲みながら孝一は弁明した。

孝一「おかしなことは断じてしていない。これは・・・これは・・・真理の探究です。」


ユズハ「いいから、親の電話番号を言いなさい。」



孝一「親バレは勘弁して欲しいなぁ・・・なんて」
孝一は事情をすべて説明した。


ユズハ「話はわかりました・・・全くわからない気もしますが・・・つまり、あなたは不良でヤンキーということね」


孝一「いえ、どちらかというと品行方正な人物をめざしているんですけど」

ユズハ「夜中に出歩いて、人の家の壁で妙なことをしている品行方正がありますか・・・そう、あなたが不良ということはこの道場に入るべきね。」


孝一「は?」



ユズハ「社会で必要とされていないと感じる不良が、この道場で稽古する内に次第に自分の存在を認めていく、そんな感動するエピソードが必要なのよ。この傾いた道場にはね!」



孝一「・・・この道場傾いているんですか・・・」

ユズハ「ええ、今も門下生ひとりいないわ」


孝一「・・・帰っていいですか?」

ユズハ「月謝は安くしておくわ、明日もまた来るように」