はたく 一家団欒と孝一
夕刻の都会
あたりは壊れた建物と瓦礫の山、
さながらゴーストタウンといったところだろうか
孝一は自分のことをお父さんと呼ぶ少女としっかり手を繋ぎながら歩く・・・
アーケードの広告の所々に『2026年』の文字が文字が見えた。
誤植?みんなこぞって間違えるなんて都会の人は抜けてるな・・・
孝一「ところで・・・どうしてこの街はこんな風になったんだ?」
少女は何を言ってるんだろう?という目で孝一を見つめる・・・
少女「シン・クマのせいだよ・・・」
シン・クマ?
少女「とってもでっかいシン・クマにふみつぶされたの!」
・・・怪獣映画みたいに?・・・それってたしかシン・ゴ○ラじゃなかったっけ・・・
シンクマってなんだよ、センスないよ・・・
少女の話を冗談半分に聞きながら孝一は考える。
もしかして、自分が10年後の未来にタイムスリップして、未来の世界がシンクマとかいう怪獣に滅ぼされかけてるなんてことなんだろうか・・・はは、そんなわけないだろうに・・・映画を見に来て変な想像力が働くようになってしまったかな・・・
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孝一は今、夕食をご馳走になっている。
見慣れた家、
しかし、かなり古くなってしまったように見える。
いつもの食卓、
少女の父親と母親と父親の母・・・孝一は状況を飲み込めない・・・
3時間前、
しばらく歩いていたら・・・スーツ姿の男性がこちらに近寄ってきた。
その男は・・・まるで鏡で自分を見たような姿をしていた・・・
少女は目をまるくして驚く。
少女「・・・おおおお・・・お父さんが・・・ふたり、ふたりもいる・・・」
男「潮理・・・お父さんを見間違えるなんて・・・ひどいな・・・」
孝一は・・・おそるおそるその男に聞く・・・
孝一「・・・あの・・・あなたの名前は・・・」
男はこちらを振り向いて不思議そうに答える。
「俺の名前?・・・水上孝一って名前だが・・・その様子・・・知り合いにでも似てたか」
(というかこの高校生っぽい子供・・・俺にそっくりだな・・・)
水上孝一?
ははは・・・悪い冗談だ・・・こいつが10年後の俺とでも言いたいんだろうか・・・
行く当てがないのなら今晩は泊まっていけと言われた。
孝一は言われるままに男についていく。
そして現在・・・孝一は自分の家で見知らぬ家族と夕食卓を囲んでいる。
孝一はショックのあまり食欲が湧かなかった。
「私の料理は・・・口に合わない・・・かな」
男の妻らしい女性はどうみても大海だった・・・10年たったからか少し老けているようにも見えるがむしろ大人っぽさが増してキレイになったと思った。
孝一「・・・いいえ・・・そんなことは・・・ないです・・・ちょっと胸がいっぱいなだけで・・・」
俺が大海と結婚した?・・・娘もいるってことは・・・つまりはそういうことなのか・・・孝一は顔から火が出そうな気がした。
俺はこの状況をどう受け止めればいいんだろう・・・
「この子は・・・本当に孝一くんにそっくりだね・・・」
母「そうね・・・あの頃の孝一には・・・本当に手を焼かされたわ・・・あの頃は毎晩のように壁を殴りに行っていたわね・・・」
男「昔の話は止めてくれよ・・・今は壁殴りなんてしてないだろ?」
母「ふふ・・・そうね」
壁殴りなんてやめた・・・だと・・・
10年後の俺は壁殴りをやめただと・・・
その言葉は孝一に大きな大きなショックを与えた。
ああああ