はたく リメイクの話

うだうだしてても物事は進まない



ジャンルはラブコメにしよう



『私の好きな人はいつも壁を殴っている』



大海さん視点多めで



はたく って意味わからんから 『壁ドゥーン』にしようかな・・・それは流石に








孝一君に助けられる 1回目



この人・・・壁の前で何をしているんだろう・・・



私の名前は『大海灯り』中学2年生


クラスで私は浮いていた。
クラスで一番かっこいいらしい悠馬君に告白されてそれを断った。
そのことがクラスみんなの反感を買ったらしい・・・


休み時間は、クラスに居づらくて、校舎の目立たない場所にいることが多かった。
校舎の壁にもたれかかってぼんやりと空を眺めていた。
「・・・空きれいだな・・・」



微かにお腹にビリビリと振動が走る・・・



50mほど となりに男子が立っていた。
何かぶつぶつ言いながら怖い顔で壁をにらんでいる。
「・・・よし・・・今の感じでもう一度・・・」




何をしているんだろう?




興味はあったけれど
私はこの奇妙な おとなりさん と一定の距離を保っていた。





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校舎裏、ひとりの女子が数人の女子に囲まれていた。
背の低い女子は突き飛ばされて壁に追いやられる。
「お前、まだ、悠馬君に色目使ってんじゃねーぞ」
「そうよねー」
「マジウザい」


「・・・私は・・・そんなこと・・・していない・・・」


「はー聞こえねーんだよ」
「出たよ、カマトトちゃんがー」
壁にドンと手をついて女子を威嚇する。
囲まれた女子はめそめそと泣き出してしまう。


かすかだが・・・壁からびりっとした振動が走った。



ズン




音はない。
再び音のない衝撃が走る。
壁全体が生き物のように怒号を上げてうねるような衝撃・・・衝撃が伝播して、


壁に手をついていた女子に伝わる。びっくりして女子は手を退けて後ずさる。



「ふふふ、今日は今までになく調子がいいぞ・・・」



微かに笑いながら
2,3メートル先にジャージ姿で壁を殴る男子が一人・・・
「あ・・・」

全員が彼の方に向き直る。
「・・・」



女子「あれ・・・学内で噂の・・・」
女子「・・・ねえもう行こ」
囲んでいた女子はわらわらと解散していった。



(私を助けてくれた?)



「・・・ここで・・・何をしてるんですか・・・」



男子は考える・・・



「あー、そう・・・これは『壁ドン』?」





(それ、絶対違うと思う・・・)

ともあれ、それが初めての出会いだった・・・







孝一君に助けられる 2回目




彼は今日も壁を殴っていた。




(助けてもらったんだから・・・お礼を言わなくちゃ・・・)
私はずっと彼に言葉をかける機会をうかがう。


「何あれ・・・」
「ああ、あれは校内で有名な気が狂ってるって噂の・・・」
後ろを通り過ぎた女子の噂話が聞こえた・・・

急に話しかけるのが怖くなった。



私も同類だと思われてしまうかもしれない・・・



私は勇気が出なかった。
家に帰ってベットに仰向けになりながら考える。
直接言えないのなら、手紙にするとか・・・
便せんを用意して机に向かった。


・・・なんだかこれ・・・ラブレターみたい・・・


手紙作戦は保留にした。




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人気のない校舎裏
私はひとりの先輩男子に絡まれていた。
逃げる方向に手をドンと付いて逃げ道をふさがれた。
「君・・・可愛いね・・・連絡先教えてよ・・・」



「・・・あの・・・わたし・・・」



「・・・最近調子が悪いな」
2,3メートル先にジャージ姿で壁を殴る男子が一人・・・
「あ・・・」


「ちっ」
先輩男子はしぶしぶ去っていった。


(また、助けてくれた?)
「あ・・・あの・・・」



孝一「・・・これは『壁ドン』だから」



その姿は『自分は別に変なことはしていない』と言いたげだったが・・・
説得力は皆無だろう・・・



「あの・・・『壁ドン』って・・・二人でするものじゃ・・・」



「・・・(そうなの?)」
急に自信をなくした彼は・・・すごすごと去っていく・・・


あ・・・またお礼を・・・言いそびれてしまった・・・





彼の名前と謎の女性




彼は今日も壁を殴っていた・・・





まぁ殴らない日なんて、ないんだけども・・・


大海(・・・お礼が言いたい・・・)


お礼を言っただけで同類扱いされるなんてことはない。
王様だって平民が良いことをしたら「褒めて遣わす」って言うはずだ。



彼を見る。
とても真剣な顔で壁を殴っている。
それにしても・・・
どうして壁を殴り続けるんだろう・・・聞いてみたい気もしてきた。



そうだ・・・
手紙を書くにしても『名前』がわからないと・・・彼が自分宛でないと思うかもしれない。



彼は2年D組のはず・・・
D組に知り合いはいない・・・
ドキドキ・・・なんか緊張する・・・


「ん・・・壁を殴ってる人の名前?・・・ああ、名前は・・・何だっけ?」
「・・・水上孝一って書いてあるね。」



水上孝一・・・水上孝一・・・



その日家に帰ると
「・・・お帰り」
「ただいま・・・お母さん」

「・・・灯り・・・学校で何か『いいこと』でもあった?」
「・・・どうして?」

「最近、暗い顔ばかりしてたのに、今日はなんだかとても嬉しそうだから・・・」
「・・・そうかな?」


着替えてベットに仰向けになる。
「・・・いいことか・・・」




名前を知ることが出来たから?




なんだか顔が熱くなるのを感じた。
よし、手紙を書こう。
せっかくだし、クッキー焼こうかな・・・キレイにラッピングして・・・



・・・より一層・・・ラブレターっぽくなってしまった・・・




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ヤジが聞こえた。



「やーい、やーい、妖怪壁殴り」



孝一「・・・小学生みたいな からかい方 しないでください・・・ユズハ師匠」

ユズハ師匠は校庭の壁の上に飛び乗って、声をかけた。

ユズハ「中学校か・・・懐かしいわね・・・あの頃の私は清楚で可憐だったなぁ・・・」
孝一(・・・今は?)



ユズハ「それにしても・・・孝一君がクラスで浮いているというのは事実のようね・・・廊下ですれ違う時、女子が微妙に距離をあけるもの・・・」
孝一「・・・気づいても言わないで欲しかったです。」



こっそりのぞいていた大海とユズハの目が合う・・・
大海はびっくりしてその場から逃げていった。



ユズハ「・・・今、可愛い女の子がじーっと私を見ていたわ・・・」
孝一「・・・」
ユズハ(・・・美しい私に見惚れていた?)
孝一(・・・すごく見当違いなこと考えてそうな顔してるな)


ユズハ「ああ、あんな感じの可愛い子がうちの弟子になって欲しい。さあ、ナンパして来い、孝一」
孝一(・・・女子に距離あけられてるって言った後にその命令は酷過ぎる気がする・・・)



びっくりした・・・あの女の人は誰なんだろう・・・


なんだか少し嫌な気分になった。
まさか嫉妬だろうか・・・



悠馬君のことでクラスのみんなが怒ったのはこんな気持ちになるからだろうか・・・



胸が苦しい・・・




今日は大雨だった。
気温もぐっと下がって肌寒かった。


下駄箱から傘をさして帰るところで水上君の姿が見えた。
雨に打たれてもなんともないように壁を殴り続けている。


水上君は・・・すごいな・・・雨なんてもろともしない・・・
私もあんなふうに強くなれたら・・・



大海さんは孝一に傘を貸そうか迷ったが、そのまま帰ることにした。



やはりこれは・・・『恋』だろうか・・・

異性が気になる思春期特有の・・・

水上君を見ると・・・ドキドキする・・・かっこいいとかではなく・・・
『この人社会的に大丈夫だろうか』というドキドキかもしれないけれど・・・











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孝一君に助けられる 3回目




3度目の・・・




校舎裏
少女はカッターナイフを持ったクラスの女子に追いつめられる。
後ろは壁だった。
「あんたさえ、あんたさえ、いなければ悠馬くんは私を好きになってくれるはずだったんだ」

「・・・お・・・落ち着いて・・・」



ドン



音はない。ただおなかのシンまで響く衝撃が走る。
その発生源は4〜5mとなりで壁を殴るジャージの同級生
「・・・・今日は本当に調子がいい・・・今日こそは・・・今日こそは・・・」



「・・・」
「・・・」



孝一君は完全に自分の世界にトリップしているようだった。
「・・・となりに・・・ひともいることだし・・・」
「・・・もう我慢できない。」
女子はカッターを振り上げる。


(ええ、無視・・・)



「あんたの綺麗な顔をズタズタにしてやるー」
少女はしりもちをついた。振り下ろしたカッターが攻撃対象を外れて壁に刺さる。



ズン



もう一度壁に衝撃が走る。カッターから振動が伝播して、
「・・・なんだこ・・・」
カッターを振り上げた少女はそのまま気絶してしまうのだった。
ジャージ男子も同時に気絶しているようだった。
2名は保健室に運ばれた。


孝一君は先生たちにこっぴどく叱られたようだった。
カッター女子は保健室でしばらく寝かされてケロッとしていた。何をしていたか記憶がないらしい。
事態はよくわからないまま丸く収まった。





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大海(・・・もういいや、恥も外聞もすべて投げ捨てよう。)
恋とか惚れたとか関係ない。
このままお礼を言わないのは人として駄目なんだ。




ただお礼を言う・・・それで終わり・・・
明日からは他人としての生活が始まる・・・ただそれだけ・・・




彼は今日も壁をこっそり殴っている。



「・・・あ・・・あの・・・」
孝一「・・・・」

「・・・わたし・・・2年A組の『大海灯り』っていいます。」
孝一「・・・?・・俺は2年D組の水上孝一だけど」


大海「い・・いつも・・助けてくれて・・・あ・・ありがとうございます。」
孝一(・・・助けた・・・助けた?・・・)


孝一「・・・ああ、あのときね。あった、あった。」
大海(・・・覚えてないんだろうな)


孝一「・・・そういえば、『壁ドン』の間違えを指摘してくれて、こちらこそありがとう・・・」
大海(・・・全然釣り合ってない気がする。)



大海「水上君は・・・すごく強いね。・・・わたしもあなたみたいに強くなれたら・・・」
孝一「・・・」



孝一「・・・だったら」
孝一は真田道場への入門を勧めることにした。






孝一「あの良かったらなんだけど・・・俺は真田流って武術を習ってて・・・門下生が少ないから勧誘しろって言われて」

大海「・・・」

大海は嬉しい気持ちがどんどん湧いてくるのを感じた。



大海「・・・わかった。行く」



孝一「だよな・・・いきなり そんなこと言われても困るよな・・・」
孝一(ん・・・今なんて言った?)


孝一はあまりの二つ返事に困惑した。
孝一「・・・あの・・・もう少し悩んだ方がいいんじゃ・・・」


大海「・・・大丈夫」
大海の大きな瞳が孝一をじっと見つめる。

孝一(・・・なんなんだこの子)





その日家に帰ると
「・・・お帰り」
「ただいま・・・お母さん」


大海は母に抱き付く。
「・・・どうしたの?灯り・・・」
「お母さん・・・お願いがあるの・・・私・・・道場に通いたい。」

母は優しい眼で娘を撫でる。
「今日は・・・何か『いいこと』があったのね」


「うん、すごく『いいこと』があったんだ。」