【過去編】ミレスとラグベール城の西塔

【過去編】ミレスとラグベール城の塔




下等生物




【ラグベール王国の魔力主義】
ラグベール王国では魔力は国民の絶対指標だ。手の甲に魔力刻印を押され、国民のすべてはその数字を背負って生きていく。たとえ魔法使いにならなくても魔力が1違うだけで優遇される制度が大きく変わる。



魔力5・・・魔力5・・・魔力5・・・

魔力判定が下されてから・・・
前より一層、人生に疲れた顔になってしまった気がする。


シスター「あら、ウツロ・・・いつも通りで安心したわ」


ウツロ「・・・」


直近は宝くじに外れたような気分でもあったが、
将来起こるであろう人生の絶望を考えると吐き気がした。

逆に前代未聞の高い魔法力をたたき出した『ミレス』は、すぐさまラグベール城に招へいされたらしい。出世コースだ。今頃、毎日おいしいもの食べてるんだろうな・・・羨ましい。





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それから・・・1年が過ぎた。
ある日、急遽ウツロはラグベール城の雑用の仕事を任されることになった。




ラグベール城は巨大で入り組んだ迷路のようだった。


「あ、そこは気を付けろ」


泥棒除けの罠にかかるウツロ


「全く、魔力が低いとこんな単純な罠にもかかるんだなぁ・・・」


魔力15・・・あんまり変わらないだろうに・・・





「お前の最重要任務は、あの西塔の人物に毎日夕食を届けることだ、いいな」

「はい、わかりました。」




夕食のトレイを持って、暗い長い階段をのぼる。
塔の内部のあちこちに壁が破壊されたような跡があった。
なんだこれ?巨大魔獣でも暴れたんだろうか?

塔の部屋の扉を開ける・・・部屋の中に居たのは小さな女の子だった。



「・・・ミレス?」



見間違えるはずもない・・・目に生気がないように見えるが・・・彼女は間違いなく・・・孤児院の後輩のミレスだった。



ミレス「・・・」
ウツロ「・・・」
ミレスはじーっと冷たい目でウツロを見る。




ミレス「あなたは誰です?・・・どうして私の名前を知っているの?」
ウツロ「・・・忘れたのかよ・・・ほら、孤児院で一緒だった・・・名前は・・・」




ミレス「いいえ・・・待って・・・」




ミレス「思い出します・・・」




真剣に考えるミレス、
いや・・・そんなに経ってない気がするんだけども・・・



ミレス「徹夜明けの・・・おじさん?・・・みたいな感じでしたよね。」

なんでそこは覚えてるんだよ




そこに居たミレスに昔の面影はなく、ゴーレムや機械人形みたいで、気味が悪いと思った。










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ウツロ「相変わらず、忘れっぽいんだなミレスは・・・」
ミレス「・・・」


ウツロ「俺の名前は・・・」


ミレス「待って下さい。・・・必要ありません。」

ミレス「あなたのような『矮小な存在の名前』を覚えるのは・・・記憶能力の無駄ですからね。」
ああ・・・孤児院の後輩の態度が辛辣だ・・・



とりあえず、机に夕食のトレイを置いて食べるように促す。
ミレスは無表情に黙々とそれを口に運ぶ。



ウツロ「なんか・・・雰囲気変わったよな・・・」



ミレスは自分のイヤリングをウツロに見せた。
この魔導アイテムが自分の感情を無くすように作用しているらしい。



なんかどこかで見た







それにしても・・・こうして俺もラグベール城に雇ってもらえたってことは・・・将来安泰なんだろうか・・・
改めて実感として嬉しい気持ちが湧いてくるのを感じた。



ミレス「あなた・・・何か勘違いしているわね・・・」
ウツロ「?」



















まあ宝くじに外れたと思っておくか・・・


これからの人生のことを考えると絶望しかないが、直近はそこまで辛くもなかった。


彼女はたくさん魔法を習って、たくさんお金を稼いで、貴族と結婚する明るい未来が約束されているのだろうな・・・





はぁ・・・やはり魔力が低いとこんな単純な罠にもかかってしまうんですね・・・




俺の名前は・・・



あなたのつまみ食いにも目をつぶっているでしょう?

ち・・・バレてた