トウカゲちゃんとアクアローナの会談

トウカゲとアクアローナの会談




・・・念写させて下さいッ




魔法協会本部、別塔の最上階には噴水の美しい空中庭園がある。
ここは水の七賢人アクアローナの居室であり、
彼女の魔法によってこの世の物とは思えない幻想的な風景が広がっていた。



その庭園にひとりの少女がふわりと降り立つ。



「お疲れ様です・・・トウカゲちゃん」
「・・・アクアローナ・・・久しぶり」



少女の名はトウカゲ・・・闇の七賢人で国外監視を任としている・・・
今日は経過報告に訪れていた・・・

お菓子と紅茶が用意されたテーブルに二人は腰かける・・・
アクアローナの後方には秘書のメルビアが控えていた。



アクア「最近リムガントで話題のシュークリームを準備させましたよ・・・」
トウカゲ「わーいシュークリーム大好き」



トウカゲは魔法の書から地図取り出して国外の情勢を報告していく・・・
とても真面目な話をしているが、シュークリームを頬張る幼女の姿はその場に似つかわしくないように見えた。



アクア「そうですか・・・今はまだ様子見ということですね・・・」
トウカゲ「うん」


アクア「上手く泳がせて、利用できるだけ利用する・・・そういうことですね」
トウカゲ「・・・そんな悪いことはしてないよ?」


アクア「ふふふ・・・冗談です」
トウカゲ「もう・・・アクアローナったら」



報告も終わりに差し掛かったところで、アクアローナが顔を上げる。



アクア「・・・さて、仕事の話はここまでにして・・・メルビア」

「はっ」



メルビアは合図を受けて、たくさんのドレスが掛けられた衣装ラックを準備する・・・
その衣装はすべて『フリルとリボンのたくさんあつらえられた衣装』だった・・・


アクア「トウカゲちゃんに似合うと思って準備しました・・・どうぞもらって下さい。」




なんだこのゴテゴテした衣装・・・




振り向いたアクアローナはとても『期待に満ちた表情』をこちらに向けていた・・・


アクア「・・・」
トウカゲ「・・・」




トウカゲ「いらない・・・かな・・・」




アクア「・・・え」
トウカゲ「流石にちょっとゴテゴテし過ぎて悪趣味というか・・・」



あまりにショックだったのか・・・立ちくらみを起こしたアクアローナはテーブルに寄りかかる。



アクア「トウカゲちゃんに似合うと思って夜な夜な作業したのに・・・」
トウカゲ「手作りなのッ?」


何をしているんだアクアローナは・・・そんな熱意があるならば他にできることがたくさんあるだろうに・・・



アクア「ふふふ・・・半分は冗談です」
・・・半分はホントなの?




アクア「わかりました・・・でしたら、こうしましょう・・・」
トウカゲ「?」




アクア「そのドレスを一回でいいから着て・・・念写させて下さいッ」
トウカゲ「なんだかもっと嫌だよッ」




トウカゲ「ボクなんかより・・・姪っ子のスフィールに着させればいいじゃないか・・・」


スフィールですか・・・

スフィ「アクアローナおば・・・・・・お姉さま・・・私は一応社会人なので・・・こんな子供っぽい服はちょっと・・・」


アクア「・・・あの子はもう子供ではなく・・・大人ですから・・・私のたくらみに気づいてしまうのです・・・」
たくらみって自覚はあるんだ・・・



トウカゲ「年齢でいうならボクは130歳なんだけど・・・」



アクア「トウカゲちゃんなら許されますよ」
いや、許されないよ


ドレスを押し付けてくるアクアローナと防御するトウカゲの取っ組み合いがしばらく続く・・・



アクア「・・・はぁはぁ」
トウカゲ「・・・ぜぃぜぃ」







トウカゲ「相変わらずだね、アクアローナ・・・ちょっときついことをいうけれど・・・そんなだからサリアと喧嘩することになるんだよ?」


アクア「むー・・・そんなことありません・・・あの子はいまだに私の送ったドレスを着ているそうですよ・・・ふふ」
サリアは着る物に執着がないからなぁ・・・




$$$




トウカゲちゃんは瞬間移動の魔法でささっと去って行ってしまった・・・


アクア(ふー・・・結局着てもらえなかったですか・・・悔しいですね)


それでは代わりにミラにでも・・・ミラは・・・北支部ですか・・・



じゃあメルビアに・・・



・・・
・・・・
・・・・・



サリアにでも送りますか・・・


メルビア「あの・・・今すごく不快な視線を感じたのですが・・・」
ひどい侮辱を受けた気がするメルビアだった。