ウツロ 失恋の記憶

失恋の記憶




キョウカ「ウツロちゃんの噂の彼女の話・・・聞きたいなぁ」




週末の居酒屋にて、
ほろ酔い加減のウツロ・・・
キョウカさんが話を切り出す。


『恋人なんていない』などという やり取りをするが信じてもらえない・・・


恋人、伴侶なんて・・・贅沢品だ・・・
お金と心に余裕のある人しか持つことを許されないんだ・・・





ウツロ「それに・・・あの時から・・・俺はもう誰も好きにならないって決めたんだ・・・」





キョウカ「まぁ・・・ウツロちゃんにそんな過去が・・・」

ウツロは遠い目をして静かに語り始める。





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支部に来た当初の事
街の門の近くの『花屋』のお姉さんのことが・・・ちょっといいなと思っていた。

清楚で可憐で可愛らしいひと・・・
仕事へ出かけるたびに笑顔で気さくに話しかけてくれる。



仕事帰りに花を買ったりしてた・・・
彼女の笑顔を見れるだけで幸せだった・・・



ある日、意を決して彼女に告白することにした。
結婚を前提にお付き合いして欲しい


壁に向かって何度もシュミレーションしたり
かなりいい服を買ったし、
デートもどこへ行くか考えたりした・・・



その時は仕事の調子も良かった。
恋をすると生活にもハリが出るな・・・なんて
今日も魔獣に襲われかけた人をカッコよく颯爽と助けたし・・・すごいぞ俺




告白当日、
お姉さん「あらあら・・・あなたを・・・待っていましたわ」



ウツロ(え・・待ってたって俺を・・・こ・・・これはイケるかも・・・)



ドックン・・・ドックン・・・
自分の心臓の音がはっきりと聞こえるほど緊張してる・・・



ウツロ「・・・俺・・・俺と・・・」




お姉さん「あなたぁ・・・ 魔法協会の剣士さん が来られましたよー」
あなた?


花屋の奥から男が現れる。
ウツロと違い 背が高くガタイもいい、笑顔の眩しい爽やかな感じの男 だった。
男「あの・・・先日は魔獣に襲われて 危ないところを助けていただき・・・有り難うございます。」



お姉さん「私からも・・・『夫を』助けていただいて、本当にありがとうございます・・・」



夫・・・



夫「ささ・・・どうぞ・・・ご飯でも食べて行ってください。」
お姉さん「腕によりをかけた料理を作りますよ・・・」



ウツロ「いいえ・・・そういった・・・施しを受けることは 協会の規則 に反しますので・・・」



その時・・・半泣きになっていたが
感謝されて感激してるんだろうと解釈されていた気がする・・・





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ウツロ「その時の失恋で・・・俺は誓ったんだ・・・もう誰も好きにならないって」




ウツロ「・・・」
キョウカ「・・・」




ウツロちゃん・・・それ『失恋』っていうか・・・
『まだ何も始まってない』っていうと思うんやけど・・・


キョウカは意識して笑顔を崩さないようにした。













今日はのんべんだらりとキョウカさんの居酒屋で飲んでいた・・・





ウチは最近話題のウツロちゃんの彼女について聞きたいなぁ



彼女?・・・ああミラのことか・・



あれは彼女じゃないです・・・ただの後輩




ウツロ 失恋の記憶



俺はもう決めたんだ・・・



まぁ・・・ウツロちゃんにそんな過去が・・・



門の前の花屋のお姉さん・・・