ウツロ 辺境貴族と恨み言


辺境貴族と恨み言





魔法学校へ行こうか悩んでいる少女の話の続き





少女「どうして、魔法協会のお兄ちゃんはあんなに邪険にされているの?」
お爺さん「・・・お前は賢くなったな」


少女「賢い?」
お爺さん「何かを疑問に思えること、それは『賢い』ってことなんだよ」

少女「・・・」



魔法協会に払う費用が高いと不満に思っている・・・それは『何と比べて?』ということを考えるんだ。




比べるモノは、色々あるかもしれない、『他国に比べて』もしくは『昔に比べて』





この場合は昔に比べてが正しいだろうね。
50年ほど昔、魔法協会がまだまだ小さな組織だった時はね、周辺貴族の領主のひとりひとりが魔女や剣士を雇っていたんだ。食客として招いて割と裕福な暮らしができたらしい。そしてね、周辺貴族のひとつひとつが今よりずっと権力と財力を持っていた。彼らは次第に自分勝手に振舞い始めて、ラグベールとの戦時下には兵力を貸さなかったりした。結局、そんなことをしていたために誰の助けも乞うことが出来なくなって魔獣に滅ぼされていく。そんな時代に現れたのが・・・



「魔法協会と七賢人」



彼らがクラスティアの魔獣を追い払い、ラグベールとの戦争に打ち勝つ決定打になったというわけだ。


少女「なるほど・・・」


エマ=ワトソン


君の名前だけど、実は古くはこの辺りを治める小さな貴族の家系なんだよ。
もし魔法協会がなければ、今頃君は貴族のお嬢様だったかもしれない・・・


「エマ、君は魔法協会とあの剣士が憎いかい?」


少女「・・・ぜんぜん、そう思わない」


君のお母さんも含め、魔法協会は特に辺境の村々からは嫌われているんだろうね・・・


少女「・・・」




あのお兄さんはそういう物まで背負って仕事をしているんだ・・・
それはとてもしんどいことだろうな・・・





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ウツロは村長の家に入るのを躊躇していた。


(ああ、嫌だな、ここの村長、すごく怖いし、いびってくる)


いびり村長



ミラ・・・お前は女だったんだな・・・

私の事なんだと思ってたんですかー







あの剣士さん達はね、その妬みや業を背負っている・・・たとえ自分が悪いことをしていなくともだよ・・・組織に所属するってことはある面でそういう事なのかもしれないね・・・