大都会リムガント 夜の街
人々の欲望渦巻く夜のリムガント繁華街
妖しいお店が立ち並び、欲深き男女が目をギラギラさせてひしめいでいた。
ウツロは繁華街の通りの入口に立つ。
(お金良し・・・)
どこの店に行けばいいんだろう
どうすればいいのか・・・作法がわからん
客引きについていく?
いやいや、そんなの尻の毛までむしり取られるだろうが
そわそわとあたりを見回していると・・・ぽんと肩を叩かれる。
「久しぶりだな、ウツロ君」
火消のゲンさんだった・・・
ゲン「ははは・・・この辺りのことなら俺に任せろ、さぁ飲みに行くぞッ」
なんという頼もしい言葉だろうか・・・
初心者のウツロは何もかもゆだねてついて行きたくなったが、
冷静にある情報を思い出す。
仕事の付き合いでは『火消のゲンさん』は頼れる存在だろう・・・しかし、飲みの席では『火遊びのゲンさん』と言われ厄介この上ないと聞く・・・
ゲンさんは駄目だ・・・理由をつけてこの場から撤退を・・・
ゲン「わからないことがあったらちゃんと人に聞いた方がいいぞ・・・『初心者だって思われたくない』気持ちもわかるが・・・」
ここでそのセリフ・・・
昼間、少女にどや顔でそのセリフ吐いた人が確かいた気がするな
・・・
一軒目はとても感じのいいお店だった。
お酒を注いでくれる女性はとても綺麗だったし・・・
キョウカさんも美人だけど・・・別ベクトルで美人だ・・・レベル高い、流石リムガント
ゲン「はははは・・・カンパーイ!!」
ゲンさんも上機嫌だった・・・
遊び慣れているなぁ・・・ゲンさん
$$$
「二件目は、『以前から狙っていたお店』に 初挑戦 したいと思うんだが・・・」
通りを歩きながらほろ酔い気分でゲンさんが切り出す。
チラシを取り出してウツロに見せる。
裏魔法協会☆
〜たくさんのセンパイお待ちしています〜
「・・・」
「なんでも、『魔法協会魔女に扮したお姉さんたち』がサービスしてくれるお店らしい・・・」
「・・・魔法協会に憧れている別業種の人向けのお店ですか?」
「いや、むしろ魔法協会の中堅剣士や魔法使いご用達の店らしいが・・・」
「・・・」
なんで?・・・魔法協会の・・・闇を感じるな・・・
「大人気の店だと聞いていたんだが・・・最近言った者は皆『あそこには近寄らない』方がいいと口々にそういうらしい・・・理由を聞いても『行けばわかる』の一点張りで・・・今日はその謎を解明しようと思ってな・・・」
「へぇ・・・」
嫌な予感がした・・・ここで逃走を選択できなかった俺は・・・そう・・・初心者だったんだ・・・
$$$
「いらっしゃいませ、センパイ💛」
魔法協会の魔女に扮した女性達の笑顔の対応・・・
・・・
なんだこれ・・・癒される・・・
普段、偉ぶっている魔法協会魔女達からこんな対応してもらえるなんて・・・目頭が熱くなっちゃうな・・・ヤバいこれは・・・幸せになれる・・・幸せになれる・・・
ぽんと肩を叩くゲンさん、こちらを見て親指を立てる
ああ、この店は当たり、大当たりだ・・・
すいません、ゲンさんのこと厄介とか思ってて、ごめんなさい。
「となり・・・よろしいですか?・・・センパイ」
ウツロの隣に腰かけた女性・・・妙齢でとても美人で青髪・・・
あれ・・・アクアローナ様にすごく似てるな。
「初めまして、アクアローナと申します」
へぇ・・・なんというレベルの高いアクアローナ様のコスプレだろう・・・
まるで本人みたいだな・・・
「・・・」
「・・・」
「あら、ウツロさん・・・こんなところで奇遇ね」
ん・・・俺の名前を知っているということは・・・
・・・本人だった。
「どうしましょう、ゲンさん」
バッとゲンさんの方を向くと・・・ゲンさんの姿はすでになく
『ここの代金はここに置いておくから精一杯楽しんで来い、byゲントール』
と書かれたメモとお金が添えられていた・・・ああ、逃げ遅れた。
水拘束ウォータージェイル・・・
水のようなモノが巻き付いて身動き取れなくなるウツロ・・・
アクア「この間は逃げられてしまいましたからねぇ・・・今日はじっくりと語り明かしましょう・・・ね・・・ウツロさん💛」
ウツロ「・・・」
$$$
後日、
同僚「リムガントの『例の店』に行ったって?・・・マジかよ・・・いいな俺も行きてぇよ」
ウツロ「あそこには近寄らない方がいい」
同僚「え、なんで?」
ウツロ「行けばわかる」
そして、悲劇は繰り返す。
夜遊びとはかくも恐ろしいものだ・・・ウツロは当分控えようと心に決めたのだった。