【行商人編】赤竜は遠距離魔法が効果的だ


【行商人編】赤竜は遠距離魔法が効果的だ




その当時の西の小国家群の国際状況の話をしよう。




西の国々は2つの選択に揺れていた。

『魔法技術を積極的に取り入れるか?』
『魔法技術を禁止して拒絶するか?』

クラスティア王国は、魔法技術によって 敵国を退け 崩壊しかけた国を立て直し、他国が羨(うらや)むほどに今なお発展し続けている。
クラスティアにならって、多くの国が魔法技術の獲得に躍起になったが、
ラグベール王国の崩壊によって風向きが変わる。
魔法によって一夜で滅びたラグベール国・・・その事件が与える影響は魔法技術の導入に待ったをかけるに十分すぎた。
今現在、ラグベール王国の魔導士の残党や盗賊に悩まされる日々・・・
魔法それ自体に恐怖や憎悪の感情を持つ人々は増えるばかりだ。



西の小国の王たちは悩む・・・そして結論はまだ出ない・・・





$$$





騎士国に来て9日目、





騎士国を去る予定日が近づく。
騎士団は周辺は にわかに慌ただしくなっていた。



「赤竜・・・だと」



国境沿いに『赤竜』が現れ、
こちらに向かってくるという目撃情報が届いたためだ。


赤竜はヤバい魔獣だ・・・


ラグベール王国でも何百人単位で死傷者を出したこともあった。
「赤竜が出たら家を捨てて逃げよう」というのがラグベールの一般認識だ。
その常識を覆したのが、ラグベール王直属の魔法使い達であり、魔法技術が国民の更なる信頼を得ることになった出来事でもあった。

・・・確かその作戦にはミレスも参加していたっけ、遠征から帰ってきたミレスが誇らしくて、しばらく『ミレス様』と呼んでみたり敬語で喋ったり していたら、ミレスから「その喋り方気持ち悪い」と言われた思い出が・・・おっと話が逸れたな



というわけだからバンリ、赤竜は火の息ブレス射程外からの魔法が効果的だ。
この前の 超絶威力の『風切り』ならそれが出来る。




バンリ「断る!」




ウツロ「・・・は?何言ってんだよ」


バンリ「魔がさして 思わず使ってしまったが・・・私は魔法が大嫌いだ・・・だから使わない」

ウツロ「好き嫌い言ってる場合か! 赤竜に無策で突っ込んでも 炭 になるだけだぞ」


その後、ゼフが止めに入るほどの口論になったが、
バンリは聞く耳を持たなかった。




$$$





騎士国に来て10日目、



ウツロがこの国を去る日だ。
先輩騎士が見送りに来てくれた。


「ウツロ君、世話になったな、特に『赤竜の情報』は役に立ちそうだ、本当にありがとう」


「いいえ・・・あの・・・」


「おいおい、そんな悲壮な顔をしてくれるなよ」
優しく笑いながらウツロの肩を叩く。


「こっから先は俺たちの問題だ・・・俺たちは必ず赤竜に勝つ、万一のこともあるから君は早く行商団の仲間にこのことを伝えた方がいい」


爽やかに見送ってくれた先輩騎士・・・
ウツロは逃げるように歩き出す。




トウカゲちゃん・・・トウカゲちゃんが居れば、なんとかしてくれるだろうか
アンデット騎士団の皆が来てくれれば・・・
この際、ジレンでもいい
ここは西の国だ・・・連絡を取る手段なんてない・・・


そもそも他国の問題に俺が意見するなんておかしいし・・・な
案外、俺が心配し過ぎているだけかもしれない。
普通に倒せましたねってなる可能性もある・・・



ラグベール城の時のように
弱い俺が出しゃばって、しゃしゃり出ても・・・迷惑なだけだ。










魔がさして


朝一出発すれば
国境沿いの街に駐留する行商団へ帰れる予定だ。


先輩騎士が見送りに来てくれた。


「ウツロ君、世話になったな、ありがとう」


世話などしていない。
バンリのサンドバックになったという意味では役になっただろうか・・・


「バンリめ、筋トレ時間のロスだから来ないなんて、本当に困った奴だ」