【行商人編】言いそびれたお礼と騎士スキルと魔力体操
赤竜を倒した・・・
皆が私に惜しみない賛辞をおくる。
それを返しつつ、私の心は上の空だった。
ウツロは「事の次第を見届けるまで残る」と言っていた。
・・・ウツロになんて言葉をかけようか
『魔法って実はすごかったんだな、教えてくれてありがとう』
軽いな・・・軽すぎる
『此度の働き、大儀であった』
いや、重ければいいということではなくて・・・
『なんだ、魔法って私が使えば強いじゃないかぁ、このこの〜』
ちっがーう
・・・
魔法に感謝しているんじゃない・・・私は・・・『ウツロに』感謝しているんだ。
自分の心臓がバクバク脈打つのが聞こえる。
うう・・・緊張するなぁ
言うぞ、騎士国と騎士団みんなをのために・・・手助けしてくれたことにちゃんとお礼を言うんだ。
・・・
ゼフ「ウツロ君なら、『もう大丈夫そうだから行商団に戻る』って、もう行っちゃったよ?」
な・・・ななな・・・なんだと
せっかく私が、今までの人生でないくらい頭を働かせて、気の利いた言葉を考えていたのに
この・・・この・・・
あの馬鹿ー!!
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騎士国辺境の街からさらに先の街に行商団は駐留していた。
赤竜が出現したという噂を聞いて、一目散に次の街へ移動したらしい。
カルロ「おお、ウツロじゃないか、ちゃんと罪を償ってきたんだね、出所おめでとう」
投獄されてたみたいな言い方止めろ
カルロは上機嫌だった。
なんでも上流の商会と良い取引ができて儲かったそうだ。
カルロ「これも ウツロのおかげ だよ」
ウツロ「?」
というのも ウツロを騎士団に引き渡す際、騎士団長に上流商会への紹介状をしたためてもらったかららしかった。つまり商売のダシに使われたってことかよ・・・
カルロ「まぁまぁ、そんなに怒らないでよ、今日は好きなだけ飲んでいいからねっ」
ウツロ「この店の酒を飲み干してやる」
カルロ(どうせ、そんなに飲めないでしょうが・・・)
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その後も
騎士国は魔法技術を積極的に取り入れていくこととなる。
バンリは・・・
今日もこっそり森の奥で魔法の練習に勤しむ。
ゼフ「バンリちゃん、今日も頑張ってるね・・・『魔法の練習』」
バンリ「・・・」
ゼフ「?」
バンリはゼフの耳を引っ張る。
ゼフ「痛い、痛いよ、バンリちゃん」
バンリ「これは・・・魔法じゃない!」
・・・これは・・・これは・・・『騎士スキル』だからッ
ゼフ(ええ、わけわかんないなぁ・・・)
・・・
ウツロは・・・
今日もこっそり筋トレに勤しむ。
カルロ「最近は『筋トレ』頑張ってるねぇ」
ウツロ「これは、筋トレじゃない」
・・・これは・・・魔力が増幅する『魔力体操』なんだよ
カルロ「へいへい」
カルロは深くツッコまないことにした。