ウツロ 私は一日だって戦闘の鍛錬を欠かしたことはないわ


私は一日だって戦闘の鍛錬を欠かしたことはないわ




リシア=ヘルメルは北支部に帰るケーリーを引き留めようと彼女の後を追う。




彼女は魔法学校時代のケーリーの同期で同じ風紀委員でもあった。
今も付き合いのある友人
そして、今回のケーリーのヘルプを一番喜びもした。



風紀委員長のケーリー
れでぃーす リーダーのミラージュ
色ボケ、チェルシー


・・・あのグループの中じゃ一番地味かもしれないけど
・・・あの人達の中で浮いていたらもう『人外的な何か』になってしまう気もするけど



リシア「ケーリー、待って!!」



ケーリーはキャリアバックを引きずる手を止める。
「何度引き留められても、北支部帰還の命令は出ているわ」

支部長の捨て身のお願いだったらしいが、上の決定であった。



ケーリー「それに・・・プライベートでも用事があるしね」



おお、もしかして恋人だろうか?

ケーリー「そろそろ、実家の麦の収穫を手伝わなくちゃ」
※ケーリーさんの実家はミストクラノスの農家

・・・農作業!?



リシア「・・・農作業だったら、私が代わりに行くよ?」




ケーリーは本部に残って欲しい。
私よりケーリーの方が、ずっとずっと優秀だし、仕事もデキるもの


むしろ私は、この仕事に向いていないから・・・やめるべきなのかもしれないし


「・・・」
ケーリーは再びくるりとひるがえって歩き出す。
少し不機嫌な顔をしている。




「そういう思考は・・・嫌いだわ」




リシアはケーリーを追ってミストクラノス行の馬車に乗り込む。
ケーリー (どこまで付いてくるのか)
リシア「もちろん、収穫を手伝うためだよ」
本気?


リシアは結構 頑固なところ があったっけ、昔それでずいぶん助けられたこともあったな・・・




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カランカラン!!!


魔獣威嚇用のベルがせわしなく鳴り響く。
街道を進む馬車が動きを止める。


リシア「魔獣・・・こんな場所で?」


ケーリーはさっと動いて前方の状況を把握する。
(悪魔熊デビルベア・・・こんな場所で珍しいな)


ケーリー「馬車はゆっくりUターンさせて10分ほど走った場所で待機してください・・・リシア、あなたは魔法協会に応援を要請して」


リシア「ええ、わかったわ・・・ケーリー、どこ行くの?」
ケーリー「どこって・・・あいつの足止めに」


戦うの?!


リシア「確かに魔法学校時代ケーリーは最強だったけど、今はもう非戦闘員だし、危ないよ」


大丈夫・・・



「私は、今日まで一日だって戦闘の鍛錬を欠かしたことはないわ」



毎日?
ってなんでだよっ!!
それがさも当然のことのように言っていたが、どう考えてもおかしいし、変だから



ケーリーは魔獣から目を離さない。

悪魔熊は、吠えて
馬車の方向転換を待たず、全速力でこちらに向かってくる。


「!?」


ケーリーが青白く光った。
彼女の存在がふっと消える。



雷速ライトニング!



次の瞬間には、
悪魔熊は悲鳴をあげて仰向けに横たわっていた。

久しぶりに見たケーリーの魔法
変わってないどころか学生の頃より
キレが増してないだろうか

今も昔も私はその姿にぽかんと口を開けることしかできなかった。




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魔法の書の部署は今日も忙しく働く。

リシア「私、今週も頑張りますから」

「おお?そうか」


『リシア・・・私は・・・』


最後何かを言いかけた、ケーリーの言葉をさえぎって私は帰ってきた。
冷徹女王ケーリーの時折見せる弱った顔
私はあれに弱い。


次の連休はまたケーリーと旅行に行きたいな・・・
私はそれをモチベに今週の仕事に取り掛かるのだった。








「どうしたの?リシア」
リシアは室長からケーリーを引き留めるように言われたことを話す。
しかし、北支部長は強情に譲らず、本部の出した結論は『ケーリーを北支部に戻す』であった。