ウツロ ファシルドール編


ファシルドール編




正解はひとつじゃない




行商団の野営地に夜遅く戻る。




街の近くとはいえ、夜間哨戒は欠かさない。
今晩は、男衆の数人が見張りをしているようだった。



「お、金なしウツロじゃないか・・くく」
「どうしたんだよ、街に用事なんかないだろ?・・・くくく」

ウツロ「・・・」


歳の近い男衆はなんだか顔に余裕が感じられる。
く・・・これが『男になった』ってことなんだろうか・・・差をつけられた気がした。



「お前ら・・・夜の店だけが女の子と仲良くする方法じゃないんだぞ?」



年長の先輩が二人をたしなめる。



「ナンパして女の子を落とすって方法がある」



な・・・なんだってー

そして始まる先輩の武勇伝・・・
その話、何回か聞いたな・・・


ウツロは切り上げて立ち上がる。



「なんだよノリ悪ぃな」
「ん、なんか疲れた顔してんな」

「そりゃ、いつもの事だろう」
「それもそうか」


「・・・」
何したわけでもないが、確かに体がしんどい
『あの歌声で精神を削られた』はあるかもしれん



「そういえば、おとといの夜、ウツロが綺麗な女の人と歩いてるの見たぜ」



「え?まさか、ナンパかよ、この野郎」

「いや、気絶して、抱えられて、連れ去られている感じだった」

それ、レイスに魔法で拘束されて連行されている途中か・・・
見てたんなら 助けてよ



適当に言い訳してようやく寝床に入る。



レイスの声が頭を駆け巡る・・・きつい


真剣に歌うレイス・・・


ナンパか・・・
レイスは美人だが・・・



「ないな」



ウツロはため息をついた。











ウツロ(あれ・・・その発想はなかったな・・・当たり前の事なのに)








レイスの決断



解決方法はわかっている。

魔法を使わなければいいんだ


無意識に使ってしまうのならば


あの行商人の首飾りを自分に装備すればいい。
それで私は歌に関しての魔法を使えなくなる。



わかってる・・・





売りたくない



寄こしなさい。



絶対に嫌だ。



寸止め




どうしてそんな嘘ついてまでそれを寄こさないの?



私はあなたを拘束した時あなたに思考読み取りマインドスキャンをかけた。


あなたはそれをそんなに大事に思っていない



あなたが死ぬほど娼館に行きたいけどお金足りないって事だって読めてるわ・・・


ぶー



お前・・・本当に何でもありかよ



昔から魔法の才能だけは無駄にあるからね



今からでも魔術師になった方がいいだろうに




底辺は辛いぜ?


やめた方がいい



俺が言うんだ間違いない。

(なんだこの謎の説得力・・・)




笑われて辛い日々




それでも私は・・・本物が欲しい!!





大粒の涙を流すレイス、戸惑うウツロ















俺が悪いみたいじゃんか



ほらよ



じゃあお金



・・・お金はいらない



どうして?これで念願の娼館にいけるわよ?

その話引っ張るのやめろ




なんというか、あんたを応援したくなったんだ
だから、お金はいらない



ふ・・・



ほっぺにキス


ありがとう、私は頑張るわ



自分に何が起こったかわからず目を丸くするばかりだった。






$$$





そりゃもうすごかったし



ウツロは見栄を張った。







その笑顔はずっと心に残るレベルだった。