【行商人編】レイスの決断

【行商人編】レイスの決意




レイスは自分の最も尊敬する歌姫の肖像画を眺めながら、ため息をつく。




解決方法はわかっている。



魔法でズルしたくないのなら
魔法を使わなければいいんだ・・・


それでも
無意識に使ってしまうのならば


あの行商人の首飾りを自分に装備すればいい。
それで私は歌に関しての魔法を使えなくなる。


わかってる・・・
無意識に使ってしまうんじゃない・・・



私の意志が弱いんだ・・・




$$$




今日も川べりであの行商人を落ち合う。
私は取引を持ち掛ける。


「もちろん、ちゃんとお金を払うわ、私はそれなりにたくさん稼いでいるし」


ウツロはレイスの目を見る。
「・・・」
ふっと息を吐き、



「売りたくない」



きっぱりと断る。



「な・・・どうして?」
「・・・あー・・・その・・・なんか大事だから・・・駄目だ」



理由が浮かんでこず、ちぐはぐな返答



「寄こしなさい」



「絶対に嫌だ」




手に魔力を集中させるレイス

剣を構えるウツロ


「そう何回も敗けると思うなよ」




$$$




正面切って戦う。
レイスの『見えない手』のような魔術を風切りで斬り落とすも
何度も復活するそれに勝てるはずもなく・・・
結局地面に押し付けられて拘束されるウツロ・・・


「全く・・・無駄な足掻きを・・・」
「・・・ちくしょう」



「どうして・・・『そんな嘘』・・・ついてまでそれを寄こさないの?」



なんで嘘って・・・わかる?・・・



「私は前回あなたを拘束した時あなたに思考読み取りマインドスキャンをかけた」


「あなたはそれをそんなに大事に思っていない、むしろ『厄介事に巻き込まれるから早く捨てたい』と思ってる」


うぐ


「あなたが死ぬほど娼館に行きたいけど、お金足りないって事だって読めてるわ」


ぶー



「お前・・・本当に何でもありかよ」
「昔から魔法の才能だけは無駄にあるからね」


・・・今からでも魔術師になった方がいいだろうに



ウツロは観念して理由を話す。



レイスの魔法が悪い事だとは思わない。
観客だって感動して涙流してるし、
お客が喜べばそれは本物だろうがよ

せっかく、評判良くて出世し始めたのに
また底辺に戻るとか、やめた方がいい・・・



ウツロ「この俺が言うんだ間違いない」
レイス(なんだこの謎の説得力・・・)




たくさんの聴衆の期待・・・
それを裏切る覚悟・・・
わかってる・・・
怖い・・・




「それでも・・・それでも私は・・・本物が欲しい!!」





大粒の涙を流すレイス、

戸惑うウツロ







俺が悪いみたいじゃんか



笑われて辛い日々



ウツロはバツが悪い。








モールデン=トルガー



私の最も尊敬する歌姫だ。
まだ黎明期のファルシドールで歌い続けた彼女の歌声は
若くして死んだ彼女の人生と同じく、
儚く悲しくそして眼もも開けることが出来ないほど眩しい。



レイスは考える。