ウツロ エルフの魔法

エルフの魔法




エルフという種族について




西の国では、魔法は一般的ではないが、
エルフは例外である。この世界で最初に魔法を使い始めたのがエルフとされており、すべての魔法と魔術はエルフに起源をもつ。ただ、エルフ自体が魔法とその存在自体を秘匿しているため、その全容は不明である。

一説によれば、クラスティア王国の魔法ですら、エルフから見れば原始人が火を使って喜んでいるレベルだとかなんとか・・・




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ウツロは拘束されていた。
歌姫レイスと呼ばれた彼女は地面に腰かけてふっとため息をつく。


「大人しくしてれば手荒なことはしないって言ったのに・・・」

現時点で手荒なことをしておいて良く言う


全力で逃げたはずだったのに捕縛された。
エルフの魔法かなんかだろうな・・・全く羨ましい


じっと俺を観察する彼女


ウツロも彼女を見る。
エルフで美人、ちょっと化粧もしている、ドレスも煌びやか・・・
内心、美人と居られて内心少し嬉しい気持ちが湧く
いやいや、今の状況で何考えてるんだ俺



「・・・ぷぷ・・・あなた魔力が・・・矮小ね」



ああ・・・
いきなり酷い事を言われた。
魔力の話だけど
男として傷つくんだが



「だからこそわからない・・・人間に私の魔法が見破られたのは初めて」



魔法を見破る?
ウツロは頭の中で状況を整理する。
歌姫レイスの歌・・・観客は涙を流して感動・・・ウツロには下手な歌に聞こえた・・・魔法・・・

つまり、彼女の歌は魔法でごまかしているってことか

そして、残る疑問、なぜ見破れたか
幻惑のたぐいの魔法は魔力が小さいほど、かかりやすい傾向にあるはず
なぜだ・・・もしかして、俺の隠された能力もしくは才能の開花・・・


「これだわ」


レイスはウツロの首飾りをまじまじと見る。
「高度な術式を簡略化して使ってる・・・なんて熟練度・・・」ぶつぶつと呟く。
レイスの顔が近いのでやり辛いウツロ


・・・トウカゲちゃんの首飾りが原因



【トウカゲちゃんの首飾り】
ウツロが身に付けている、見たこともない文字がたくさん刻まれた首飾り。
魔力が上がるという触れ込みでジレンがらもらったので、今現在までずっと身に付けている。
トウカゲちゃんの影移動の目印の役割と影移動に干渉しないよう『周辺の同系統の魔法の打ち消し』をおこなう。

また、この首飾りのせいか・・・
魔法の打ち消しって言ってもすごく限定的だし、むしろ損する方が多い気がする。




「さて、理由は判明したけど・・・一座のみんなも知らない私の真実を知ってしまった・・・あなたへの対処はどうしましょうか?」




空気が変わる。
片手に魔力を集中し始めるレイス・・・
(ひぃ・・・やられる、やられる)


「やめろ、落ち着いて話し合おう、俺は行商団所属で1週間後にはファシルドールを離れるから・・・このことは誰にも言わないし・・・・・・何でもするから!!」



レイスは手を止める。
「何でもするの?」
「ああ、そうだから、その手の魔力をしまえよ」


レイスはしばらく静かになった。
何か言いたそうに言葉に詰まる、そして意を決して、震える声でウツロにつぶやく。


「じゃあ・・・あなた、私の歌の練習に付き合いなさい」


は?













「高度な術式を簡略化して使ってる・・・なんて熟練度・・・この首飾りをに魔術をほどこした人物はかなりの高齢に違いないわ・・」





付随する効果として、トウカゲちゃんの影移動に干渉しないために首飾りの周辺の同系統の『闇魔法の効果を打ち消すこと』があるという。




「」



一週間くらいだな


「ともあれ真実を知られた以上・・・」
やめろ、知らないふりするから






「あなた・・・疲れた顔をしているわね」

放っておいて欲しい


「一言で言うなら、娼館にお金が足りなくて行けなかった貧乏人みたいな顔をしているわ」

なんだその例え、
ドンピシャかよ


「流石、エルフ・・・俺の思考でも読んだのか?」



「・・・」
「・・・」




「え、本当にそうなの?」
やや引き気味のレイス


「え、思考を読む魔法とか使ったんじゃ?」
「そんなの使えないわ」


(やらかした・・・)





ちょっと待てい





歌が下手なことは秘密





旅芸人一座の駐留場所と言ったところか



奇妙なカッコをした人物がたくさん
見慣れない猛獣とかいるし


ウツロはその駐留場所の茂みの中にいた。



「俺をどうするつもりだ」



ウツロは何度も路地を曲がる。


コツコツコツ・・・


感覚の短い特徴的な足音・・・
確実に尾行されているな


姿は見失っているはずなのにこっちの動きを捕捉されてるってことは
『何か』使ってるな
あの歌手はエルフだったし、何をしてくるかわからん



ああ