オリジナル小説

キロ「騎士道悪魔ねぇ、どんな悪魔なんだろ?」
使い魔「戦時中でもないのに、剣を携帯してるようなちょっと危ない奴なんじゃないですか」
キロ「・・・それは俺のことか?」




かしゅかしゅ・・・甲冑どうしが擦れる音がこだまする。
ひとりの老爺が、甲冑に身を包み、槍をかついで闊歩している・・・
「また、あのおじいさん・・」
町の者は、通りゆく奇怪な姿を遠巻きに見ている。
老爺の顔は青白く、今にも死ぬそうなほどやつれている。



天使は、オープンカフェのテーブルに腰掛けながらその様子をまじまじと見ていた。
(・・・・夕食には、まだ早いかな?・・・・)





老爺は広場の中央まで来ると叫んだ
「勇気あるものに告ぐ!!!我とともに、町の金を吸い上げる議員どもと戦うものはおらぬか!!!」
町の者は遠巻きにその様子を見ているだけで相手にしていなかった。
先ほど、騒いでいた若者も同様だった。
「お前、さっきから、あの爺さんの方ばっかみてんな、もしかして・・・」
「馬鹿、そんなわけないだろ・・・」
町の警備の者が出てきたところで、老爺はすごすごと退散した。




帰り道、老人の顔はますます青ざめてきて倒れそうになった。
キロ「おっと、大丈夫ですか?」
すんでのところで支えた。
キロ(重い・・・なんでこの人甲冑着てんの?・・・)



老爺「・・・・はあはあ・・・かたじけない・・・わしの家は、すぐそこだ。・・・・もしよければ夕食でもご馳走しよう」




老爺の家は、ボロボロながらも、大きな屋敷だったが、使用人ひとりいなかった。
屋敷の玄関には、石像がたくさん並んでいた。
おびえる人がモデルになっているものが多かった。
使い魔「すごくリアルですね、さぞかし名のある彫刻家の作品なのでしょうね」
老爺「いやいや、こやつらは私が天誅を下した者ども、彫刻と呼ぶにも値せぬわ」
使い魔「??・・いやそれでも素晴らしい」
キロ(怖・・・)




老爺は家に入るとすぐに大きな居間へ行き、誰かに膝をついて話し始めた。
老爺「姫、ただいま戻りました」
老爺が話しかけているのは、古びたドレスを着たマネキンだった。
麦の束で作ったかつらに顔は、紙に描いた絵を張り付けたものだった。
キロ「・・・・・」
使い魔「・・・・・・」





老爺「こんなものしか用意できぬが、」
キロ「いいえ、おかまいなく」
料理は、とても質素なものだった。
昔の騎士の食事を正確に再現しているような味気なさだった。


キロ(肉、食べたいなぁ・・・)



最後に紅茶を飲んだ。何度か使った茶葉なのかほぼお湯のような紅茶だった。
落ち着いたところで老爺が話し始めた。
「キロ殿と申したか・・・少し、お話を聞いてもらえないか・・・」