オリジナル小説

オリジナル小説



母親は道場へ通うことをあっさりと許可してくれた。
これでご近所で迷惑になっている奇行をやめてくれるとでも思ったのだろうか。



ユズハ「私の予想通りね。あなたは私の弟子になってくれると思っていたわ。」

孝一「予想ですか・・・」


ユズハ「あなたは武術に飢えているそう感じた。」



孝一「壁を壊す=武術じゃありません。そうなんというか、やっぱり『はたく』は真理の探究・・・その一言に・・・」

ユズハ「では、修行を始めます。」
孝一(聞いてやしない・・)



ユズハは何かの小道具を孝一の前に準備した。これはオセロだった。


孝一「なんですか?これは」
ユズハ「オセロよ」
孝一「知っています。」
ユズハ「お気に召さなければ、チェスでも将棋でもトランプでもいいわ」



孝一「武術を教えてくれるんじゃないんですか」


ユズハ「これは・・・武術の一環よ」


孝一「・・・・」


二人はオセロを始めた。
中盤にさしかかった頃、ユズハは紙とペンを取り出した。


ユズハ「さて、ここからが本番よ。」

ユズハは何かを書いて紙を伏せた。


孝一「?」


ユズハ「次にあなたが打つ位置を予想した。さあ、どこでも好きな位置に打ってみて」

孝一「・・・・」

孝一は駒を置いた。ユズハが紙をめくるとその位置が書かれていた。


孝一「・・・・」

ユズハ「どうしてわかったのかって顔をしているわね。3つの駒を裏返せる場所と2つの駒を裏返すことができる場所そのどちらかに打つと予想した。わたしが何も言わなければあなたは3つの場所を選択したでしょう。でも、わたしがちゃちゃを入れた。わたしの思い通りにしたくなく、なおかつ勝負を捨てる気もないあなたは2つの駒の場所を選択する。」


孝一「・・・ち」
予想通りだった。


ユズハ「次はあなたの番よ。わたしの打つ手を予想してみて。」


孝一「・・・」

ユズハ「・・・」


孝一「よし、当たり」

ユズハ「さて、理由を言ってみて」

孝一「このカドを押さえるとここを起点にたくさんの駒を裏返すことができるからだ。」

ユズハ「わたしがあなたの予想をわざと外そうとしてデタラメに打つと考えなかったの?」

孝一「この勝負で何かを伝えようとしている本人がいい加減なことをしたら、このオセロの意味がなくなってしまう。それに、あんたは小さな勝負もこだわって勝とうとするタイプだ。」


ユズハ「・・・・ふふふふ。察しが良くて助かるわ」



オセロの結果は孝一の惨敗であった。


孝一「オセロとか人生で数回しかやったことないし」

ユズハは紙を裏返した。
『このあと、「オセロは久々にやって調子が出ない」と負け惜しみを言う』


孝一「・・・・」




孝一「あんたが次に言うセリフは武術は『予想することが大事なのじゃよ』とかそんなんだろ・・・」
ユズハ「ええ、その通り」







ユズハ「『先見』によりすべてを読みきり、力を使うことなく相手を圧倒すること それが真田流体術・・・」






ユズハ「私は、真田柚葉・・・そうね、やっぱり師匠とかマスターとか呼んでもらった方がいいかしら・・・」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・