オリジナル小説

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vs居合い達人



ユズハ師匠がいなくなってから、3ヶ月
孝一は道場には何度も訪れていた。なぜならば、そこにいい壁があるからだ。



最近調子がいいぞ。2週間に1回ぐらいいい感じに壁が振動する気がする。



そういえば最後にユズハ師匠言っていたなぁ
ユズハ「もうここは封鎖するので、入っては駄目」
孝一(いい壁が・・・)
ユズハ「わかったわね、孝一君」
孝一「はい、わかりました。」
ユズハ(眼が泳いでる・・)



ジーパンとTシャツに長い刀を携えて、長身で無精ひげを生やし、長髪を頭の上部に括り付けて髷を結っている。男はゆったりと商店街を通り過ぎた。
刀を持ち歩いている・・・明らかな銃刀法違反だが、男の発する迫力に圧倒され、誰も何もいうことはなかった。



+++++++++++++++++++

「先ごろ起きた『行き倒れ』の男の死体の検死結果が出ました。外傷は全くなかったので、病死かと思われます。ただ・・・」

「どうした?」

「内臓の一部がバッサリ切断されている箇所があったとのことですが、」

「おいおい、間違えてメスで切ってしまったんじゃないだろうね」

「そうかもしれません。」

「さらに調べではこの男、何やらお金の使い込みで逃亡生活をしていたとか、もしかしたら誰かに・・・」

「外傷もなく、毒も検出されない。どうやって殺したというのかね。」

「そうですね」


++++++++++++++++++




「邪魔するぜ」

突然、見知らぬ男が道場の門をくぐって入ってきた。


孝一「?」

「誰だ。お前は、ここで何をしている?」

孝一は不法侵入をしていることを自覚していた。

孝一「・・・いえ、たまたま通りかかっただけです。」
孝一(あれ、なんかこのひとのカッコおかしくない?)


「それにしては・・・長居しているように見える・・・」
孝一は敷地内なので、弁当、水筒、タオルを広げて壁を殴っていた。



「まあ、いいか、ここに『真田ユズハ』という名前の娘が住んでいるはずだが、・・・知らないか?」


孝一(なんだこの人、師匠の知り合いじゃないのか)
その人物に会った事がなさそうで、名前だけを知っている。ろくなことではなさそうだ。借金取り?かもしれない。



孝一「知りませんねぇ、たまたま通りかかっただけなので・・・」



「・・・・・俺は、・・・殺し屋だ。・・・真田ユズハという娘を探している。この意味がわかるか・・・」


孝一(・・・・)



「・・・動揺を隠しきれてねぇな、お前、その娘の縁者だな」

孝一は改めて相手を見た。長い刀を腰に挿している。一歩踏み込んで刀を抜けば、孝一の体が真っ二つになる範囲内に入っているだろうか。
「逃げようとか考えないほうがいいぜ、そこを動くなよ、」
すごい威圧感・・・



「真田ユズハは今どこにいる?」

「・・・」



返答を間違えて、斬られて、明日のニュース番組で放映か・・・


『最悪の事態や、悪い事態の想定も必要だけど、いい事が起こる想定も同じくらい必要よ。』


もしくは、刀がひかかって抜けないとか、ふふ


「何がおかしい。」

孝一「俺はあんたに斬られるかもしれない。俺の『はたく』があんたを超えることもあるかもしれない。」

「はたく?壁の前でやっていた。突きの練習か?」

孝一「最近、調子がいいんだぜ、1000回に1回ぐらい壁がいい感じに振動する。」


「・・・」


「話にならねぇな」


「?」


「生死をかけた戦いは常に一瞬ですべてが決まる。1000回死んで1回生き残る技が成功すると思えるおめでたさ、そんな気概で鍛錬を続けているお前は話しにならねぇよ。」


孝一「・・・・お前に何がわか・・・」


一瞬、深く沈んで鍔鳴りの音だけが響いた。記憶をたどると男の刀が自分に向かって弧を描いたことが思い出された。つまり・・・斬られた。



「邪魔したな」
男はふらりと去っていった。


孝一は自分の体を確認した。血は出ていない。痛みもない。背後を見回してぞっとした。壁には重機の爪でえぐったような傷が残っていた。

壁をはさんだ孝一は無傷で壁には傷跡・・・そんなありえないことが起こった。



「ターゲットはもぬけの殻ですか」
「ああ」
「勘の鋭い方なので、今回こうして奇襲を仕掛けたのですが、どうにも遅かったようで」

「それで、あの少年はなにか情報を持っていそうでしたか?なんならうちの尋問部隊に回しても・・」
「・・ああ、あれはただの素人の子供だ。叩いても何も出てこないだろうよ」

「そうですか、それは残念」









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孝一「・・・ってことがあってね」

(最近、元気がなかったのはそれが原因か・・・)


孝一「あんな良い壁に傷をつけた・・・あいつを許さない・・・」

(そっち?)