はたく

はたく



風切さんのガン飛ばしは怖い




高校に入って3か月そろそろ新しいクラスにも慣れ始めるころだった。

「やっぱり、大海さんだよなー」
「そうそう、ちょっと背は小さいけど、美人でスタイル良くってさー」
「わかるわかる、つい目で追っちゃうよなー」


「それで・・・・」



風切さんが、めっちゃこっちにガン飛ばしてきて、目を下向けるまで、あるあるだよな・・・




男子たちは縮こまって目を伏せる。

大海さんと風切さんはいつも二人で行動することが多かった。風切さんの守護する大海さんに近づくことができる男子などいるはずもなく・・・






新しい生活、新しい制服、何よりこの高校は、孝一君と一緒・・・







大海「・・・水上君、おはよう。」
孝一「・・・ああ、おはよ、大海」
孝一はあいさつするとそそくさと逃げるように離れていってしまった。



あれ?・・・なんだかよそよそしい気がする・・・



孝一(・・・・大海の後ろの奴、怖ぇ・・・なんでこっちをこんなに睨んでくるんだ?)
風切(・・・どうしてかよく思い出せないけど・・・あの男からすごく不快なオーラを感じる・・・)




大海「風切ちゃんそんな怖い顔してたら、せっかくの美人が台無しだよ。」
風切「・・・悪いね。ちょっと頭に引っかかることがあって・・・」




優しくていい子だな・・・
大海は初めてできた友人だ。悪いやつに騙されないように私が守らないと・・・





$$$





風切は不機嫌だった。
気が付くと大海は、ある男子の方ばかり見ているからだった。


数日後・・・


大海「・・・おはよう。」
孝一「・・・ああ、おはよ。」


大海(やっぱり、気のせいじゃなく、よそよそしい・・・)


孝一(・・・大海の後ろの女子、すごい殺気放っている・・・しかも、今日は刀持ってるし・・・柄に手をかけてるし・・・)




孝一「じゃあな・・・」
大海「待って、水上君・・・」


大海「・・・なんか・・・高校に入ってから距離が離れた気がしない?」
孝一「・・・そうかな?」



大海「・・・昔は・・・優しく抱き寄せて、耳元でささやきあうくらい?仲が良かったのに」
孝一「そんなこと一度もなかっただろー」



孝一(・・・後ろの人がもう刀を20cmくらい抜いてるけど・・・臨戦態勢なんだけど)




思い出してきた・・・私はこいつと戦ったことがある・・・




風切は孝一と大海さんの間に刀を振り下ろした。地面に薄く傷ができる。
大海「・・・風切さん?」



風切「私と・・・もう一度勝負しろ・・・『水上孝一』」













風切「私が勝ったら、金輪際、大海に近づくな」

大海「・・・ちょっと、風切りちゃんいきなりどうしたの?」



風切のするどい斬撃をかわして、孝一は中庭に逃げ込んだ。



孝一(やっぱり、あの時の刀女子だったか・・・あのときより斬撃の鋭さが増しているみたいだな・・・)



息つく暇なく風切りは次の斬撃を繰り出す。その剣閃は孝一の体をすり抜けた。
風切の態勢が崩れる。






風切(受け流し・・・しまった・・・)
やられる・・・そう直感したが、風切の体には何も起こっていない。
それどころか殴られたとおぼしき箇所に痛みが全くない・・・



孝一(・・・振動しない・・・失敗した・・・)



攻撃後の孝一はまるで隙だらけだった。というか戦っているというのにこっちを意識すらしていなかった。

風切「舐められたもんだね・・・」
風切は刀をしまって、その場を立ち去った。





負けた・・・









放課後


大海さんは壁の前で呆けている孝一を見つけた。
ずいぶんショックを受けているようだった。



孝一が大海さんに気づく。




孝一(金輪際、大海に近づくな・・か)




孝一は大海さんに背を向ける。そこからゆっくり離れようとした。

大海「あの言葉は・・・風切ちゃんの冗談だから・・・本気にしないで」
大海に後ろから抱き付かれた。


大海さんの胸のあたりの柔らかいものが自分の背中に当たるのを感じた。
おうふ


孝一「・・・ごめん、俺が悪かったから・・・少し離れて」
大海さん「?」




大海さんから差し出されたチョコレートを食べて、お茶を飲んで一息ついた。




孝一「・・・」
大海さん「・・・」



負けて落ち込んでるんだろうな・・・こんな時なんて声をかければいいんだろう・・・



大海さん「・・・うまく言えないけど・・・風切ちゃんに勝ったり・・・誰かに勝つことが、水上君のやりたいことなの?」



孝一「・・・」
大海さん「・・・」




孝一「・・・・そうえいば・・・そうじゃなかった。」



孝一「俺のやりたいことは壁を壊すことだけだ。じゃあ、別に誰かに負けても気にすることないな」

大海(・・・それで納得できちゃうんだ・・・)




孝一「・・・危うく目的を見失ところだった・・・ありがとな、大海」

大海さん「・・・どういたしまして」
大海さんは少し照れていた。





$$$




風切さんはいつものように竹藪で剣の稽古をしていた。

あいつ・・・この間よりも動きがスムーズだった。
何より、間合いに入られて打撃を受けるなんて負けたのと同義だ。



風切は鞘から刀を走らせる・・・縦に2列に並ぶ竹がどちらも斬られて倒れる。

やっぱり駄目か・・・



前の竹を斬らずに、後ろの竹だけを斬り落とす・・・ゼン師匠の技・・・




$$$



孝一は壁の前に寝転がって考える。


1000回に1回・・・壁がいい感じに振動する確率だ。
対人戦だと調子よかったから、普通に成功すると思い込んでいたけど、そう甘くないか・・・


立ち上がって壁を殴る。・・・また、失敗



まだまだ・・・先は長いな・・・
























まだまだだな。


両方



風切り必殺

斬空