はたく 熊とテスラ先生
放課後ホームルーム
テスラ先生が連絡事項を告げる。
テスラ「・・・それから・・・最近この近辺で不審者が目撃されているようだから気を付けること・・・」
「先生、具体的にどんな不審者ですか？」
テスラ「・・・噂では全身真っ黒であるそうです。」
黒い服で近所を徘徊している人物・・・
全員が孝一を見る。
孝一「？」
テスラ「そして・・・全身が『毛むくじゃら』であるそうです。」
・・・毛むくじゃら！？
「何それ・・・怖い」
「俺、早く帰ろ」
クラスの全員は底知れない恐怖を抱いた。
孝一は思い当たる節がひとつあった・・・
まさかあの人のことじゃないだろうな・・・ヒトじゃないけど
多分、その不審者 最近、真田流の道場によく来てドッチボールしてるな・・・
熊「よぉ、ユズハちゃんはまだ帰ってこないのかよぉ。しゃあねぇ孝一、ドッチボールしようぜ！」
テスラ「・・・コーイチ、なんだか汗かいてません？」
孝一「え、気のせいですよ」
＄＄＄
ふー今日は帰るのが遅くなってしまいましたね・・・
テスラ先生は暗い道をひとりで歩く。
テスラ（まさか・・・不審者に出くわしたりしないでしょうか・・・）
角を曲がる際、黒い大きな物体が見えた。テスラ先生は慌てて隠れる。
テスラ「いた・・・」
彼は全身黒く、毛むくじゃらであった・・・
いた・・・
テスラはセーフティを外して壁を背に構える。
今日は待ってきて良かった・・・サイレンサー付きのコレ・・・
※日本ではダメです。
なんだあの不審者・・・どう見ても動物に見える。
テスラ「そこの不審者！！止まりなさい！！」
テスラは銃を毛むくじゃらに向けて鋭い声で言い放つ。
熊「うおお、なんだ、なんだ」
いきなり、白人の姉ちゃんが銃を構えて飛びだしてきた。
熊「映画だな・・・映画の撮影だな？」
カシュ
テスラ先生はためらいなく引き金を引く。熊の横の電柱に穴が開く・・・
テスラ「これは本物です・・・いいから両手を後頭部に乗せなさい。」
なんてこった・・・近年の交通技術の発達と円安で外国人旅行者とともに外国人犯罪も増加傾向と聞くが実際に被害にあうなんて・・・
いや、俺も武道家のはしくれならば悪に屈してはならない・・・
熊「・・・ふ、お嬢ちゃん・・・やめておいた方がいい・・・俺は『真田流』を習っている・・・」
真田流・・・だと・・・！？
コーイチの使う武術も真田流でしたね・・・
孝一は特殊部隊の銃弾を受流したり、テロ部隊の銃弾を受流したりを平気でおこなっていた・・・
※孝一がごくごく集中できているときのみです。
テスラ「・・・つまり・・・銃など恐ろしくない・・・ということですか・・・」
熊（・・・え？・・・そうなの・・・いつの間にそんなことになってたんだ？真田流・・・）
じりじりと間合いを詰める熊とテスラ先生・・・
彼らの戦いの火ぶたが切って落とされようとしたその瞬間
ズン
地面に振動が走る。この振動は・・・
振り向くと３０ｍ程度離れた場所で孝一が壁を殴っているのが見えた。
＄＄＄
事情を説明する孝一
テスラ先生「やっぱり、グルだったんですね。コーイチ」
孝一（ やっぱり ってひどい）
熊「俺はユズハちゃんと孝一に会うためにたまに山を下りてきているだけだ。何も不審な事はしていないぞ」
孝一（存在自体が不審・・・って言ったら傷つくかな・・・）
テスラ「あなたは存在自体が不審ですよ」
孝一（言っちゃった・・・）
テスラ「それにしても、熊と修行とは・・・あなたの強さの一端を垣間見た気がします。」
山深く山中に捨てられ、熊に拾われた少年孝一、大自然と熊が彼を強くしていった・・・
テスラ「・・・という感じデスね！」
孝一「勝手にひとの生い立ち決めないでください。」
数日後、
テスラ先生の提案により、
熊は小学校の登下校のパトロールのボランティアをさせられている。
やんちゃな小学生に大人気であるらしい。
大海「・・・水上君・・・すごいね・・・まるで本物の熊みたい。」
孝一「・・・」
みんな着ぐるみだと思っているらしかった・・・
テスラ「・・・よし、そのまま、その暑苦しそうな毛皮を脱いで、姿を現しなさい。」
熊「・・・え、いや、そいつは無理だ。俺はこれ一枚しか着ていないんだ。」
テスラ「いいから脱ぎなさい。そんなに寒くもないでしょう。」
熊「無理じゃなくて、できないんだって・・・」
真田流・・・つまり、銃など恐れるに足らずということですか・・・
え、なんで？
いいから山か動物園に帰りなさい！
電話するけど、群馬のサファリパークでいい？
せめて上野動物園にしてくれ、あっちの方が都心に近くて便利だし
都心に近いってナニするつもりデスか！
このＵＭＡが熊であるとします。
熊「ＵＭＡってちょっとカッコいい感じか？」
孝一（・・・どうだろ）
どうして彼は人間の言葉を話しているのです？
・・・あれ？生まれてこのかた何も考えず生きてきた。ユズハちゃんとかと普通に喋ってたし・・・
熊「いや・・・でも待ってほしい・・・『近所の家の壁を殴る奴』と『毛むくじゃらなだけの俺』客観的に見てどちらが不審者だろうか？」
テスラ「・・・」
孝一「・・・」
テスラ「・・・確かに」
孝一（・・・ひどい）
