シンカ 大きな黒猫のノワールさん

大きな黒猫のノワールさん




途方に暮れていた・・・





何も具体的な指示がないのだから当然だ。
『七つの宝石を集めろ』ってまず目的とどうやって見つけるかの方法を教えて欲しいよな・・・
さらに言うなら、見つけた報酬なども先に提示して欲しい気がする・・・
日数がかかるなら、その際の寝泊りはどうするのか、食事はどうするのか・・・ちょっと言い過ぎかな・・・



仰向けに寝てぼーっと待つ・・・



何も起こらない・・・



わかった・・・あれか・・・そういうことか・・・自分でなんとかしろってことですか・・・


・・・


とにかくこの建物から出よう、他に人がいれば何か情報をもらえるかもしれない・・・
立ち上がる、体がダルかった、服もボロボロだった・・・


トコトコと歩いて出口らしき所を見つけた。
明るい・・・外だ・・・

ふと・・・横に首の取れた骸骨が転がっていた・・・
なんだ?・・・行き倒れ?・・・




ガシャンッ




そこに足を踏み入れた瞬間、何かがキラリと光って、視界が動く・・・自分の体と地面が見えた・・・あ・・・これ・・・首が取れている・・・罠に引っかかったんだ・・・


そこで意識が途切れた・・・





$$$





目を覚ますと・・・
建物の外に寝ていた・・・


あれ・・・今首が取れて死んだはずじゃ・・・首を確認する・・・取れていない。
気を取り直す。



ともあれようやく外に出た・・・



周りを見渡した。目がくらむような断崖絶壁が目の前に広がる。
この建物はどうやら断崖絶壁の上に建てられているらしかった。
風が強くて飛ばされそうだった・・・怖い・・・
ここから落ちたらぺしゃんこだな・・・



「おはよう、同士」



上方から声がする・・・足場が悪くて怖いが恐る恐る上を向くと・・・そこには・・・黒猫がいた・・



黒猫・・・黒猫・・・あれなんかこの黒猫大きくない?




そうだ・・・俺の知っている猫はもっと小さかった・・・




この猫は小屋か大きな馬車ぐらい大きかった・・・あわわ

「ふぁーーー」

大きなあくびをした猫は、呆れまなこで再び話しかける。

「君はなんだかとても鈍いんだね・・・なんなら下まで連れて行ってあげようか・・・」




$$$





大きな黒猫に咥えられて、すごい速度で断崖絶壁を駆け下りていく・・・ひゅんとする・・・ひゅんとする・・・


森の近くまで来たところで降ろされた。



「さて、人間がいるところまで来たからボクはここまでかな?」
「一緒に来てくれないのか?」

何となく一緒に居て欲しかった・・・この獣は味方のようだし・・・

「この図体で人里におりると目立つんだよね・・・」




「じゃあ・・・そのミニサイズに変身するとか・・・そんなことをすればいいのでは?」




「・・・」
「・・・」




「君ねぇ・・・質量保存の法則って知ってる?・・・そんなこと出来るはずがないでしょうに」




常識外れの生物に・・・常識を諭されてしまった・・・