魔法協会員メンさん その2

魔法協会員メンさん その2



Side:蜥蜴人



生死を賭けた戦いの中で気もそぞろだった。
後ろの男の奇妙な行動



黄金色に輝く茹でたもの を パンと 湯切りする その流麗な動作に 息を飲む。
それは百戦錬磨の戦士のそれだ。



食べろ



彼の雰囲気に圧倒され、
言われるがままに口をつける。

口に広がるその感動を・・・どう言葉にすればいいか最初わからなかった。


熱い麺が咽を通り抜け、その美味しさが全身を突き抜けていく。


最初に感じたのは
その男が『蜥蜴人を理解している』ということだった。

理解した上でなおその先を行く。
この味はそういう事だ。


その事実に畏敬の念を感じた。


人間は、誰もが我々の事を魔獣としか見ていない・・・そう思っていたのにな




$$$




その後のことは詳しく述べるまでもないだろう。
蜥蜴人たちはこちらの調停に応じる構えを見せて、
せっせと和解に向けた交渉が進められるそうだ。

いや、なんだろうこれ
俺、今回の任務いる必要あっただろうか?



ふとメンさんから蜥蜴人に出した「ら・めん」を出される。
口をつけてみる・・・あんまり美味しくない・・・

「それは・・・蜥蜴人に合わせた「ら・めん」だからな」


「以前は自分の「ら・めん」なら誰でも唸らせることができるなんて・・・天狗になってた頃もあってな・・・その時ひどく頭を打っちまった・・・若い頃の失敗だ・・・笑ってくれ」


達人・・・その言葉がしっくりくる人だ・・・


「それにしても・・・ウツロ・・・ずいぶんと成長したな」


「・・・ほ・・・本当ですか」
(個人的に何も変わってない気がするが)



そんなことはないさ、俺の目は確かだ。



「これからも ともに励もう」
メンさんに言われるとそれはとても身の引き締まる思いがした。



それは・・・ともかく・・・


メンさんは別の鍋を準備してせっせと作業をこなす。


「こっちは人間用だ、さぁ食ってくれ」


寒い季節、白い湯気と香ばしい匂い
やっぱり、メンさんの「ら・めん」は美味かった。
いや、前よりも数段美味しくなっていた。






ああ