黒髪のイズルカ

黒髪のイズルカ



私の名前はイズルカだ。



クラスティア王国の隅っこの辺境の村に生まれた私は
生まれた時から黒髪だった。
この辺境の村で黒髪は忌むべき対象だ。



長く伸びる黒髪、汚い肌、痩せた体・・・すべて醜い。



「イズルカちゃん、おはよう」


「・・・」
「?」


「・・・お・・・おは・・・おはよ”う”」
「?」


年の近い子と目も合わせられず、
声を出しても上ずってドモる。
ああああ・・・



私は・・・いつも村の皆からのけ者にされる。



憎い・・・
幸せそうにへらへらしているあいつらが憎いぃい



あーもう、この人生アカウントは駄目だな。
来世に期待しよう。
来世では美女に生まれて、チートスキルなんてもらって、美男子の奴隷を買うんだ、ぐへへ


木の枝にロープを巻く



・・・よし・・・死のう・・・



自害を試みる。


苦しい・・・
黒髪が・・・
手の様に変化して私の体を支えて、ロープを斬る


どさっと地面に転がる。


けほけほ・・・
また・・・駄目だったか・・・



どうやら、私には『髪魔法』なるモノが生まれた時から使えるらしい。
村で唯一魔法の事を知っている婆さんに驚かれた。

嫌われる黒髪に呪われた気味の悪い魔法

村の奴らに気味悪がられる理由が増えただけだった・・・



今日も死ねなかった・・・
私の髪魔法が本人の意志と関係なく、勝手に私を生かすんだ。


私は本当は死にたいのに










家族が死ぬ?・・・だから何?






家に帰る。
晩飯の量がひどく少ない。


「イズルカ、晩飯の時間を守るようにいつも言ってるでしょう、今何時だと思ってるの?」


うう・・私は家族にも虐げられている・・・







今日も森へ出向く。
森は危険がいっぱいだ。
もしかしたら、私をあの世に送ることが出来る魔獣と出会えるかもしれない。


遠目に・・・今日はずいぶんと狼が多いな


ん?なんだか動きがおかしいぞ・・・



狼は村に襲撃をかけるようだった。




ざまあぁ見ろ・・・私を貶めた罰だよ・・・因果応報だ!!!



こんな時に善人ぶるなんて卑怯だろうがよ!!!

ここで私が奴らを見捨てたら私の方が非難されちゃうじゃないか!




お?勝ってる?・・・ざまぁねえな狼さんよぉ?・・・はははは弱い弱い



い・・・嫌だ死にたくない!!!

ああ、どうしてこんなことしようと思ったんだ、私、あんなクズども放っておけば良かったんだ。
死にたくない、死にたくない、生きたい、たとえ悪魔に魂を売ってまでも!!!




でも私・・・黒髪だし
不細工だし

内面がドクズだし・・・


私が魔法協会員に



『戦う意思を持った目をしているか』よ・・・あなたはそれを持っているわ



私に・・・戦う意思が・・・

ああ・・・ああ・・・・うわあああああああ・・・ああああああああああ

私は汚い声で大泣きした。
ずっとずっと涙が止まらなかったんだ。



$$$



全く運命という奴はよくわからないものだ。
まさか私が魔法協会員になるなんてな



絶対、あいつら、私の事、いやらしい目で見てる。
うおおおお



なんだ、ウツロか、



お前を見ても何も感じない

ああ、そうか

うーん、むしろ若干のシンパシーを感じる。まぁ私の方が奴よりマシだけどな





ああ




家は貧乏だ、私を魔法学校へやる金なんてあるわけないだろう

確かに私は醜いが、村の奴らだって大して変わらない、バーカ、バーカ


魔法が使えるなら、魔法協会に就職するのはどうかなんて話も上がったこともあったっけ



いや、私は孤立してるんじゃない、低能な奴らと一緒にされたくないだけなんだよ。


そもそも魔女になる気なんてないしな・・・
誰かを助けるとか馬鹿々々しい、チートスキルがあるなら徹頭徹尾自分のために使うべきだ。
誰かのために命を賭けるなんて、そんな哀れな存在になりたくない、馬鹿なんだろうか・・・くく



狼に食われよう、それならば確実にあの世へ行けるはずだ。