オリジナル小説
孝一とユズハはポテトチップスをつまみながらテレビを見ていた。
孝一「犯人は奥さんで決まりです。」
ユズハ「ふー」
孝一「なんです。その『まだまだね』みたいな表情は・・・」
ユズハ「犯人は、宅配業者のおじさんよ。」
孝一「え、そんなわけないでしょう。そんなこと物理的に・・・」
探偵「犯人は・・・宅配業者よ。」
孝一「えー」
ユズハ「奥さんはミスリードね。」
孝一「だからって、宅配業者のおじさんって矛盾だらけですよ。」
ユズハ「多少矛盾があってもいいの。結果的に読者を驚かせるのが、ミステリー番組なんだから・・・あなたはテレビ番組の枠の中に囚われて考えてしまった。」
ユズハ「さて、今日は組み手をしましょうか。」
ユズハ「さあ、どこからでもかかってきなさい。」
孝一は飛び込んだ。だが、どう向かっていっても簡単に往なされて投げ飛ばされてしまう。
孝一「ぐ・・・」
孝一は距離を取った。
ユズハ「さて、孝一、あなたは距離を取れば、間合いに入らなければ私の攻撃を受けないと予想した・・・・」
ユズハは一気に距離をつめた。ユズハの手からきらりと光る何かが孝一の手首を掠めた。
孝一「ナイフ?」
ユズハ「これはおもちゃだけどね。・・・今の攻撃であなたは動脈を切られて死んでいたわ。確かに投げ技は距離をある程度つめないと使えないけれど、武器を使えば別・・・相手が武器を持ってはいけないなんてルールはないし。そこも予想の選択肢に入れる必要がある。」
ユズハ「真田流は元々 農民が編み出した技と言い伝えられているわ。農作業をしているときに熊に襲われることを想定した護身術」
孝一「熊・・・流石に出てこないんじゃないですか。」
ユズハ「いいえ、よく出没していたそうよ。熊のほうも何度か撃退されるうちに武術の動きを踏襲するようになってお互いを高めていったそうよ。」
孝一「熊は・・・そんなことしないんじゃないですかね。」
ユズハ「あなたの予測はどうも枠に囚われ過ぎている帰来がある。もっと自分の意識の外で何かが起こることも想定しなさい。」
ユズハ「さー、想像しなさい。私と対峙している瞬間・・・私が拳銃を取り出してあなたの心臓を打つかもしれない。そしたらあなたはどう対処する?道場からうまく退散できたとしてそれを見越していたスナイパーがあなたの脳天をぶち抜くかもしれない。」
孝一「・・・・・」
孝一は色々な悪い事態を想像した。そうすると一歩も動けないような気分になった。
ユズハ「最悪の事態や、悪い事態の想定も必要だけど、いい事が起こる想定も同じくらい必要よ。例えば、今日の晩御飯は孝ちゃんの好きなハンバーグになるかもとか」
孝一「それ戦い関係なくないですか。」
ユズハ「こっそり、孝一君のことを見ているクラスのマドンナがあなたに片思いだったり」
孝一「それただの願望じゃん。そんなことは起こりえません。」
ユズハ「絶対に起こらない?そんなことはないわ、例えば、目の前に美人のお姉さんが居たりとか」
ユズハ「・・・・」
孝一「・・・・」
ユズハ「まあ、これは現実に起こっているわ」
孝一「・・・・」
それが自分のことだと言いたいのかこの師匠・・・・
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